銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 僕はリアムを信じている。リアムも僕を信じてくれている。だから何があっても、僕達の絆が揺らぐことはない。
 そんな僕達の絆を試されるような事件が起きた。
 クルト王子の即位式に出席するために、バイロン国の王城に来た。出迎えてくれたユフィとテラと共に、先に到着していたラシェットさんの部屋へ行き、少しだけ話をしてリアムの部屋に入った。
 僕とリアムの荷物を運んでくれたゼノとテラにお礼を言い、夜までリアムとのんびり過ごした。
 明日には、クルト王子の所へ挨拶に行くことになっている。クルト王子から来るように言われたからだ。リアムは面倒くさがって「行きたくない」とか言ってるけど。

「でも今会わないと、王様になったらもっと会いづらくなるよ?」
「別に会わないからいい」
「なんでよ。せっかく仲良くなってきたんだから、会える時には会おうよ」
「誰と誰が?仲良いって?」
「リアムとクルト王子」
「仲良くなんかない。今回も頼まれたからしぶしぶ来てやっただけだ」
「もうっ、素直じゃないんだから」

 僕とリアムは、ソファーに並んで座っていた。
 僕は身体の向きを変えると、リアムの頬をむに…とつまんだ。

「痛い」
「えー?そんなに痛くないでしょ。仲良くするって言ったら離してあげる」
「…いやだ」
「これでも?」

 僕はリアムの膝の上に座り、両手でリアムの両頬をつまんだ。そして正面からリアムの顔を見て思う。
 両頬を引っ張られた変な顔でも、リアムはかっこいいんだなぁ。

「いひゃい…どうして僕をつまむの…」
「目の前に柔らかそうな頬があったから」
「なにそれ」
「わかった、降参」

 リアムが僕の頬を撫でてキスをする。
 僕もリアムの首に腕を回してキスにこたえた。

「ん…ふっ…」
「ん、かわいいフィーの頼みは断れないな」
「ありがとう」
「髪…また伸びたな。切るの止める?」
「ずっと長かったから迷っちゃって」
「まあ、今回のような式典の時には、長い方が華やかでいいけどな。あー…でも、絶対に目立つよな」
「リアムが?」
「フィーが」
「服が派手だから?」
「それ!さすがラズールだよな。フィーがいちばん似合う服をよく知ってる。あの服は、おまえの銀髪と容姿を際立たせる。俺は誰にもフィーを見せたくないのに、皆がおまえを見ると思うと…面白くない」

 僕はリアムの額に額をつけて「なにそれ」と笑った。

「リアムが心配するほど、誰も見てないって。皆、王様を見るでしょ。ねぇ、先にお風呂に入っていい?」
「いいぞ。一緒に入る?」
「嫌だ。リアム…触ってくるもの」
「そりゃあ触るだろ。目の前に好きな人がいるんだから」
「だからダメ。ここにいる間はしないって決めたでしょ」
「…わかった。待ってる」
「そうして」

 残念そうな様子のリアムにもう一度キスをして、僕は着替えを持つと、風呂場に続く扉を開けた。


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