銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 馬車に乗ったまま門をくぐり、少し進んで馬車が止まる。緊張して待っていると、リアム側の扉をゼノが開けた。

「リアム様、フィル様、どうぞ」
「ああ、フィー」

 リアムが差し出した手に手を乗せて、リアムに続いて馬車を降りた。
 僕は目の前の城を見上げて、気づかれぬよう小さく深呼吸をする。緊張するけど、胸を張って顔を上げよう。堂々としていよう。僕はこの国の優秀だと言われる第二王子リアムの伴侶で、イヴァル帝国のグランドデュークだ。
 リアムが僕の手を軽く引いたので、城からリアムへと視線を移す。

「フィー、いい顔してる」
「うん。僕は大丈夫」
「知ってる。でも何かあれば俺に頼ってくれよ」
「わかった」

 顔を寄せてクスクスと笑いあっていると「あのぅ」と横から声がした。

「そろそろ中に入りませんか。案内するために待ってる使用人が困ってますよ」

 荷物が入った箱を抱えたゼノが、苦笑しながら言う。
 言われて前を見ると、開いた扉の前で、女の人が戸惑った顔で立っていた。

「あっ…すいません。すぐ行きますっ」
「悪いな。新入りか?」
「あっはい!他の方々は手が空いておりませんので私が…。不慣れで申しわけございません」
「そうか。部屋の場所はわかるから案内はいらない。おまえも準備で忙しいだろう。戻っていいぞ」
「しかしっ」

 僕は背伸びをしてリアムの耳に口を寄せる。

「ねぇ、あの人、案内しないと怒られるんじゃないの?それに第二王子が帰ってくるのに、誰も出迎えないのも失礼じゃない?だから待っててくれたんじゃないのかな…」
「別に出迎えなどなくても構わないのだが」

 女の人が可哀想なほどオロオロとしている。
 僕が一歩近づき声をかけようとしたその時、「リアム様!おかえりなさいませっ」と大きな声と共に、城の奥から見覚えのある二人が走ってきた。

「おお!テラとユフィじゃないか。元気だったか?」
「はい。リアム様もお元気そうで何よりです。フィル様もお久しぶりです」
「リアム様、部屋まで俺が案内しますよ」

 ユフィの言葉に「僕も会えて嬉しい」と答える。
 テラは人懐っこい笑顔で僕に向かって頭を下げたので、僕も笑って頷き返した。するとテラが口元を押さえて驚いた顔をする。
 その様子を見たユフィが「どうした?」と聞いた。

「いやっ、前からフィル様がかわいいのは知ってましたけど、もっとかわいくなってません?ドキドキしちゃっ…」
「おいテラ、フィーに余計な感情を抱くなよ」
「ひっ…怖…。わかってます。俺は思ったことを素直に口にしてしまうんですよ。フィル様がかわいくて美しいと思ったから言ったまでです」

 隣のリアムの顔が怖い。それにテラも褒めすぎだと思う。
 僕が困って二人のやり取りを見ていると、女の人と目があった。彼女もどうすればいいのか困ってる様子だったので、僕は同意を求めるようにニコリと笑った。すると彼女は、僕から目を逸らし横を向いた。
 

 
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