銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 朝になっても、まだ熱は下がらなかった。食欲もなくてスープしか飲めない。昨日の食べられるうちに食べておいて良かった。
 昼前にはラシェットさんが来てくれた。本当は朝一番に来たかったが、やらなければならない職務があって遅くなったと謝られた。
 来るなり発熱して、迷惑をかけているのは僕の方だから、そんなことを言われると焦ってしまう。

「そんな…お気持ちだけで十分です。あまり僕の傍にいると伝染ってしまいます」
「ああ、それは大丈夫。子供の頃になってるから」
「…え?」

 そうなの?もしかしてバイロン国民は、皆子供の頃にかかってるものなの?
 そう思ってリアムを見ると、リアムが僕の額の汗を拭きながら笑った。

「子供の頃にかかってない者もいる。だが大抵の者は、軽く済ませたいと、子供の頃にわざとかからせるのだ」
「へぇ…」

 そうか、そんな考え方があるんだ。それに皆がかかってるなら、伝染してしまう心配をしなくてもいいのかな。

「じゃあ…僕のせいで雪班症になる人は…」
「この城にはいない。だからフィーはいらぬ心配をしないで、ゆっくりと休めばいい」
「ん…ありがとう」

 リアムに頬を撫でられて、僕は目を細める。

「それくらい話せれば安心かな。また様子を見に来るよ。ああ、そうだ。一昨日に君のところのラズールが来たんだが、知ってるかい?」
「はい…ここに来る前に家に寄ってくれましたから。あの、ラズールはどうしてここに来たのですか?」
「それは君が元気になってから話そう。ではまた後で」
「はい、ありがとうございます」

 軽く手を挙げてラシェットさんが出て行く。ラシェットさんと入れ替わるように、ゼノが来た。

「リアム様、フィル様の着替えを持ってきました。こちらに置いておきます」
「悪いな。フィー、汗をかいただろう?着替えようか」
「ん…自分でする…」
「ダメだ、俺がする」
「だって…汗で匂う…」
「何も匂わない。匂ってもいい匂いだし。ゼノ、外に出ていてくれ」
「わかりました」

 ゼノが出ていき扉が閉まると、リアムが僕の背中を支えて起こしてくれた。そしてワンピースのような服を脱がせ濡らした布で身体を拭い、新しい服を着せてくれる。
 僕は手を上げたり下げたりしただけで何もしなかったけど、ベタついていた肌がサラサラになりスッキリとした。
 着替えを終え僕を寝かせようとするリアムのシャツを掴んで拒否をする。

「ずっと寝ていたから腰が痛い。起きちゃダメ?」
「しかし…まだ熱があるだろ」
「でも頭も痛くないししんどくもないんだ。疲れたらすぐに休むから、庭に出たいな」
「いや、ダメだ。しかも一人で歩けないだろう」
「うん、だからリアムが連れて行って」
「え?」

 僕はリアムに向かって手を伸ばしながら、上目遣いで見る。
 リアムは、手に持っていた布を固く握りしめて考えていたが、ふ…と力を抜いて布を棚の上に置くと、僕の両脇に手を差し入れた。

 
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