銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「ありがとう…リアム。ゼノとジルも…遅くに来ちゃってごめんね」
「俺達のことはお気になさらず。それよりも話に聞いてました通り、やはり発病したのでは?相当お辛そうですよっ」
「そうかも…すごくしんどい…」
「ゼノ、医師は呼んでるのかっ」
「はいっ、待機させております!早く中へっ」

 リアムが足早に門をくぐり中へ入る。歩く振動で揺れる視界に、ゼノの背中が見える。後ろを向くと、ジルが僕とリアムの馬を連れて反対方向へ行く様子が見えた。
 僕は再び前を向いたけど、目を開けていると気持ち悪くて我慢できない。なのでリアムの胸に顔を押しつけて固く目を瞑った。


 足音や扉を開け閉めする音で、かなりの距離を移動して部屋に入ったことがわかった。
 ゆっくりとベッドに降ろされ、ブーツとマントを脱がされる。シャツのボタンを数個外され、ようやく僕は目を開けた。

「ここは…」
「俺の部屋だ。すぐに医師が薬を持ってくる。安心しろ」
「うん…。ごめんね、いつも迷惑かけて」
「迷惑などと少しも思ってはいない。元を辿れば兄上のせいだろ。ごめんな」

 リアムの大きな手が、僕の頭に乗せられる。
 僕はホッと息を吐いて微笑む。身体のどこかを、例えば足の指でもひと房の髪でもいい。リアムに触れられていると、とても安心する。

「ふふ、リアムが謝るなんて変だよ。これは誰も悪くない。強いて言えば…僕の運が悪かったのかな。でも薬もあるし、大丈夫…」
「そうか…」

 リアムが泣きそうな顔をしている。
 嫌だな、そんな顔をされると不安になるから、笑っていてほしいよ。
 そう言おうとして、医師が入ってきたので口を閉じた。
 医師の見立ては、やはり雪班症とのことだった。でも発病して間がないから、すぐに薬を飲めば重症化はしないだろうと話した。
 僕は薬を飲んだ。
 医師は、三日は安静にするようにと言い置いて出ていった。
 
「僕はもう大丈夫だから。二人とも早く休んで…」
「しかし」
「ゼノは部屋に戻れ。フィーには俺がついている」
「わかりました。何かご用があれば、すぐに呼んでください」
「ああ」

 ゼノが一礼して出て行く。
 リアムも休んでいいのにと思ったけど、そもそもリアムの部屋はここで、僕がリアムのベッドを占領している。

「ごめん…リアムのベッド、奪っちゃった」
「構わない」
「他の部屋で休まないの?」
「ここで休むからいい」

 そう言いながら、僕の隣に入ってくる。

「ええ…伝染っちゃうよ?」
「大丈夫だ。俺は子供の頃に雪班症になってるからな」
「そうなの?大丈夫だった?」
「子供の頃にかかれば、軽く済むんだよ。ある程度成長してからかかると、高熱が出て大変なんだ」
「そっかぁ…」
「フィー、しんどいなら喋らなくていいぞ」

 リアムが僕を抱き寄せる。
 僕は大好きな匂いに包まれて、気持ち悪さが少しだけマシになった気がした。

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