銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 言いたいことを言って、部屋から出て行こうとするクルト王子の背中に、リアムが疑問を投げかける。

「ラズールが雪班症に?だってあれは、バイロン国にしか無い病では?いつどこでかかったんだ?」
「まあ…それは、フィーにでも聞け。じゃあな、俺は行く。ラシェットによろしく伝えておいてくれ」
「ああ、父上のことを頼む」
「俺の即位式までは、死にはしないよ」

 背中を向けたまま答えたクルト王子の姿が、扉に遮られて見えなくなる。
 ゆっくりと遠ざかるブーツの音が聞こえなくなると、リアムが僕を椅子に座らせて「どういうことだ?」と聞いてきた。

「…ラズールのこと?ええと、ほら…半年くらい前に、イヴァルとバイロンの国境の村で、玉石の盗難騒ぎがあったじゃない?その時に、バイロン国の採掘場に、僕とラズールで潜入した話はしたよね?」
「聞いた」
「潜入を終えてイヴァル側に戻る時にね、第一王子の軍に襲われたんだよ」
「はあ?初めて聞いたぞ!何かされたのかっ?」
「んー…、僕は…大丈夫。ラズールは、その時にバイロン兵が放った矢で傷を負ったんだよ。その矢にね、毒と雪班症の病原菌が塗られてて…」
「はっ!姑息な兄上がやりそうなことだ!というか、アイツのせいじゃないかっ。今フィーが雪班症を発病してるかもしれないのも!」
「リアム落ち着いて。まさか僕も伝染るとは思ってなかったし、仕方がないよ。それに薬があるでしょ?早くラシェットさんの城に行って、薬を飲むよ」

 今にも部屋を飛び出しそうな勢いのリアムの腕を掴んで止める。
 せっかくクルト王子と仲直りしかけてるのに、今飛び出して行ったら大喧嘩になりそうだ。ましてや本当は僕が狙われていたなんて話したら、僕でもリアムを止められない気がする。
 顔を真っ赤にして怒るリアムをなだめていると、ようやく軽食が運ばれてきた。
 僕の身体は熱いけど、元気だ。食欲もある。食べられるうちに食べておかなければと、出された料理を全て食べた。
 そして今夜中にはラシェットさんの城へ着きたいと、すぐに宿を出て休みなく馬を走らせた。
 それでも城に着いた頃には、日付が変わってしまっていた。城の人達を起こしてしまうのは申しわけないと思っていたけど、リアムが宿から連絡を出していたのか、門の前でゼノとジルが待っていた。
 リアムが二人の前で馬を降りる。

「遅くに悪いな。伯父上は?」
「二人には悪いが休ませてもらうと仰って、就寝なさってます」
「それでいい。おまえ達も中で休んでればよいものを」
「大丈夫です。それに心配で休んでなどいられませんから。フィル様の体調は?」
「今のところは大丈夫だ。フィー」

 リアムが僕の傍に来た。
 リアムに向かって腕を伸ばした瞬間、視界がぐるりと回って身体が傾ぐ。

「フィー!」
「フィル様っ」

 馬から落ちる僕を、リアムが抱きとめた。
 僕は熱い息を吐き出しながら、リアムを見てゼノとジルに目を向けた。
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