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「フィーを連れて行くけど、警護は万全の体制で頼むぞ。フィーに何かあれば、俺は絶対に許さない」
「わかっている。そう怖い顔をするな」
リアムが僕を抱き寄せて、厳しい声で言う。
そうか…もしかして僕は、バイロンの民にとっては、リアムを王族から追放した悪い人に思われてるのかもしれない…。
僕の不安が顔に出ていたのか、クルト王子が静かに言う。
「フィー、貴様が気にすることは何もない。リアムが王城を出ていったのは、コイツの我儘だと皆が思っている。だから誰も貴様を悪く思ってはいないから、安心して城へ来ればいい」
「はい…え?」
そうなの?リアムが悪く思われてるの?でも…王族の地位ではなく僕を選んだのだから、そう思われても仕方がないのかな。僕だってそうだ。僕の我儘でネロや皆に迷惑をかけた。
するりと頬を撫でられて顔を上げる。
リアムが優しい目で僕を見ている。
「確かに俺の我儘だ。でもそれは、兄上がいたからできたことだ。跡継ぎが俺しかいなければ、王になった上でフィーを守る方法を考えるさ。それに兄上も俺が王族から出ることを望んでいたから、ちょうどいいんだ」
「ああ、おまえは目障りだったからな。俺より目立つことをするから、おまえを推す者が出てきて本当に厄介だった。だが、俺の弟に変わりはない。もし困ったことがあれば、俺を頼ってこい。俺も助けが必要な時は、遠慮なく言う」
「わかった」
リアムが頷き、クルト王子も頷いた。そしてリアムの肩を叩いて扉に向かおうとして、「ああそうだ」と呟いて足を止めこちらを向く。
「フィー、半年ほど前に、貴様のいつも傍にいた冷たい顔の男が、雪斑症になっただろう」
「ラズールのこと?うん…」
いきなり何を話すのだろう。そもそもラズールがあの病になったのは、クルト王子が原因なのだけど。
「その時、貴様はその男の傍にいたのか?」
「うん…僕が看病していたから」
「なるほどな。リアム、ラシェットの城に着いたら、フィーを医師に診てもらえ。たぶん、雪斑症にかかっている」
「なに?」
「えっ」
僕とリアムが同時に声を上げる。
僕が雪班症に?あれから半年も経ってるのに?今頃?
頭の中で次から次へと湧く疑問に、クルト王子が答えてくれる。
「雪班症は潜伏期間が長いのだ。鼻と口を布で塞ぎ、手袋をして看病していたなら大丈夫だが、そうではないのだろう?体力がある者ならば発病はしないが、貴様は二ヶ月前に死にかけたらしいじゃないか。重症化するかもしれないから、用心するんだな」
「わかっている。そう怖い顔をするな」
リアムが僕を抱き寄せて、厳しい声で言う。
そうか…もしかして僕は、バイロンの民にとっては、リアムを王族から追放した悪い人に思われてるのかもしれない…。
僕の不安が顔に出ていたのか、クルト王子が静かに言う。
「フィー、貴様が気にすることは何もない。リアムが王城を出ていったのは、コイツの我儘だと皆が思っている。だから誰も貴様を悪く思ってはいないから、安心して城へ来ればいい」
「はい…え?」
そうなの?リアムが悪く思われてるの?でも…王族の地位ではなく僕を選んだのだから、そう思われても仕方がないのかな。僕だってそうだ。僕の我儘でネロや皆に迷惑をかけた。
するりと頬を撫でられて顔を上げる。
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「確かに俺の我儘だ。でもそれは、兄上がいたからできたことだ。跡継ぎが俺しかいなければ、王になった上でフィーを守る方法を考えるさ。それに兄上も俺が王族から出ることを望んでいたから、ちょうどいいんだ」
「ああ、おまえは目障りだったからな。俺より目立つことをするから、おまえを推す者が出てきて本当に厄介だった。だが、俺の弟に変わりはない。もし困ったことがあれば、俺を頼ってこい。俺も助けが必要な時は、遠慮なく言う」
「わかった」
リアムが頷き、クルト王子も頷いた。そしてリアムの肩を叩いて扉に向かおうとして、「ああそうだ」と呟いて足を止めこちらを向く。
「フィー、半年ほど前に、貴様のいつも傍にいた冷たい顔の男が、雪斑症になっただろう」
「ラズールのこと?うん…」
いきなり何を話すのだろう。そもそもラズールがあの病になったのは、クルト王子が原因なのだけど。
「その時、貴様はその男の傍にいたのか?」
「うん…僕が看病していたから」
「なるほどな。リアム、ラシェットの城に着いたら、フィーを医師に診てもらえ。たぶん、雪斑症にかかっている」
「なに?」
「えっ」
僕とリアムが同時に声を上げる。
僕が雪班症に?あれから半年も経ってるのに?今頃?
頭の中で次から次へと湧く疑問に、クルト王子が答えてくれる。
「雪班症は潜伏期間が長いのだ。鼻と口を布で塞ぎ、手袋をして看病していたなら大丈夫だが、そうではないのだろう?体力がある者ならば発病はしないが、貴様は二ヶ月前に死にかけたらしいじゃないか。重症化するかもしれないから、用心するんだな」
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