銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 僕は頷きリアムが困ったように笑う。
 なんだろう、自分のことを話すの、苦手なのかな。僕はリアムの全てを知りたいのに。

「金髪は王族の証だ。だから俺はすぐに、男の子が兄上だと気づいた。すごく幼い頃に会ってはいたらしいけど、覚えていなかったから、その時初めて兄上に会ったと言える」
「クルト王子はリアムだとわかったの?」 
「俺より二つ歳上だから、わかっていたようだな。すぐにリアムかと聞いてきたから」
「ふーん」

 僕は少し楽しくなってきた。リアムの子供の頃の話を聞けるなんて。もっといろんなリアムを知りたい。

「俺がそうだと答えると、男の子はクルトだと名乗った。ああ…そういえば、俺が兄上か?と聞いた時、照れくさそうに笑っていたな。今では考えられないことだ」

 リアムが鼻で笑う。本当にクルト王子のことが嫌いなんだと感じて、なんだか胸が苦しくなった。
 俯いた僕に気づいて、リアムが焦った声で聞く。

「どうした?やはり体調が悪いんじゃないのか?早く休め」
「うん…」

 リアムに肩を抱かれて椅子に座る。
 リアムも隣に座ると、左手で僕の手を握りしめ右手で僕の首に触れた。

「やはり少し熱いぞ。ベッドがある部屋に変えてもらおう」
「待って…座ってれば大丈夫だから。それよりも話を聞きたい。お願い、続けて」
「しかし…」
「薬も持ってるから。食事の後にちゃんと飲むから」
「本当に辛かったら言うんだぞ」
「わかった」

 リアムが僕を見つめる。紫の瞳が相変わらずキレイだなと見とれていると、軽くキスをされた。

「まあ、顔色はそんなに悪くはないか…。兄上は、俺が迷って部屋に戻れないと言うと、送ってやると言った。俺は兄上の後について歩いて…なんだったかな。ああそうだ。どこから来たのか子犬を見つけたんだ。子犬なんてめったに見ないから嬉しくて、俺は子犬に触ろうとした。だが俺よりも早く兄上が子犬を撫でたんだ」
「へぇ」

 僕は二人の男の子が子犬を撫でる様子を想像して、思わず頬が緩んだ。とても微笑ましくかわいらしい情景だったからだ。
 
「どんな子犬だったの?」
「ん…茶色で耳が垂れていたかな?俺達が手を伸ばしても逃げなくて、かわいかったな」
「えー羨ましい。僕も触りたいな」
「フィーがほしいなら犬を飼ってもいいが…」

 飼ってもいいと言いながら、リアムの顔はなんだか嫌そうに見える。

「なに?」
「犬ばかりを構われたら…困る」

 まるで我儘な子供みたいだと可笑しくなって、僕は「飼わなくていいよ」と笑った。

 

 
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