銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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永遠へと続く幸福

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「リアム、朝餉の準備できたよっ」
「わかった。いま行く」

 僕が窓から顔を出して声をかけると、庭で作業をしていたリアムが笑って答えた。
 リアムが中に入ってくると、僕は布を手に背伸びをしながら汗を拭いてあげる。
 
「ありがとな、フィー」
「ん、手を洗ってきて」
「ああ」

 僕の額にキスをして、リアムが洗面所に向かう。
 僕は緩んでしまう頬を引きしめて、スープが入った器を並べた。


 僕にかけられていた呪いが消えた日から、二ヶ月が過ぎた。てっきり死ぬのだと思っていたから、僕は目を覚ますなり泣きじゃくった。リアムも僕を抱きしめて泣いていた。
 ラズールは「本当によかった」と呟いて部屋を離れてしまったけど、戻って来た時に赤い目をしていたから、隠れて泣いていたのだと思う。
 ゼノもラシェットさんも、とても安心した様子で僕を見ていた。
 こんなにも僕のことを心配してくれる人がいることが、嬉しかった。そしてこれからは、リアムとずっと一緒に過ごせるんだと思うと、僕は嬉しくて、数日は何をしても泣いていた。
 三日間はゆっくりと休んでから、僕とリアムの結婚を城の人達にも盛大に祝ってもらった。信じられないくらいに幸せで、この時も僕はずっと泣いていた。
 そして翌日、僕とリアムは家に帰ることにした。その時に、ゼノとラズールがついてくると言ってきかなった。
 ラシェットさんが「新婚なのだから二人きりにしてやれ」となだめて、ゼノは渋々頷いた。
「頻繁に様子を見に行きますからね!」と叫んでいたけど。
 ラズールは納得しなかった。僕の側近として絶対に傍を離れないと言いはった。
 仕方がないので家に来ることを許した。許したけど、数日かけて僕は説得した。まるで駄々をこねる子どもに言うように、丁寧に話した。

「ラズールはイヴァル帝国のために働いてほしい」
「別に俺がいなくてもイヴァル帝国は大丈夫です」
「そんなことないよ。ラズールは優秀だから、ネロの力になってほしい」
「俺は新王が嫌いです。それにアイ…新王の傍にはトラビスがいるからいいではありませんか」
「トラビスは冷静さに欠けるところがあるだろ?おまえがいると心強いよ」
「嫌です。俺はフィル様のお傍にいます」
「ラズール…。僕だってラズールがいてくれると嬉しいよ?でも、国を出てしまった僕が口にするのははばかれるけど、イヴァル帝国のことが心配なんだ。だからラズールがいてくれたらすごく心強いし安心する。お願い…ラズール。王城に戻って。この家には、いつでも遊びに来てくれていいから。ラズール、僕の願いを聞いてよ…」
「……」

 ラズールは、ものすごく渋い顔をした。黙って客室に戻り数日こもって出てこなかった。四日目になり、あまりにも出てこないから心配して声をかけた。すると心底嫌そうな顔で出てきて、消え入りそうな声で「わかりました」と言ったのだ。
 
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