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リアムが、僕の頭にそっと手を乗せる。
「もう泣くのか?早いぞ」
「だって…うれし…っ」
「そうだな」
リアムが笑って僕の額にキスをして、首に何かをかけた。
「え?」と驚く僕の手に、緑色に輝く石がついたペンダントを握らせる。
僕は手の中のペンダントを見て疑問を口にする。
「これは…?」
「俺の首にかけてほしい」
「え?…あ、うん」
リアムが頭を下げる。
僕は少し背伸びをして、リアムの首にペンダントをかけた。
顔を上げたリアムが、緑色の石を摘みながら「どうだ。キレイだろう。おまえの瞳の色だ」と笑う。
「うん…きれい」
「フィーには、俺の瞳の色と同じ、紫の石だ」
「え…」
僕は顔を下に向けて、胸の前で光る石を見た。
本当だ。とても美しい紫の石。そうか。リアムが僕の瞳の色を、僕がリアムの瞳の色を、それぞれが身につけるのか。
「嬉しい…ありがとう、リアム」
「ああ、また泣かせてしまったな」
僕は声を震わせながら、リアムを見上げた。
リアムが困った顔で、僕の頬に流れる涙を拭う。
「イヴァルにも有名な鉱山があるが、これはバイロンで採れた石だ。俺が記憶をなくす前に、石をペンダントにするよう頼んでいたんだ。いろいろあって取りに行けてなかったんだが、いつまでも引き取りに来ない俺を心配して、職人がちょうど城を訪ねてきたらしい。それをゼノが預かってくれていたんだ」
「そんな前から…嬉しい」
「俺が記憶をなくさなければ、もっと早くに渡せていた…ごめんな」
僕は強く首を振る。
振動に合わせて胸の上で紫の光がキラキラと揺れる。
「僕…なにも用意してない。リアムになにも渡せないよっ…」
「なにも無いことはないぞ。俺はおまえから様々なものをもらった。それにほら、これもある」
リアムが上着のポケットから小さな袋を取り出した。
「あっ、それっ。僕も持ってる!」
僕も急いでポケットから同じような袋を取り出す。この中には、お互いの髪が入っている。肌身離さず持っている宝物だ。
「うん。俺はこれを持っていたおかげで、いつでもフィーが傍にいるように感じてがんばれた。おまえだってそうだろ?」
「うんっ、うんっ!」
「それに、髪を切りたいと話してたな。切った後のこの美しい銀髪、俺にくれよな」
「え?本当にいるの?」
「もちろん」
キレイにとかし後ろに流している僕の銀髪を、ひと房つまんで、リアムが口づける。
今朝、ノラさんに頭に花飾りをつけられそうになって、全力で止めた。
さすがに花は恥ずかしいからだ。
ノラさんは「かわいらしいのに」と不服そうにしながら、僕の上着の胸ポケットにその花をさした。
それを今、リアムが僕の髪にさす。
「あっ、ちょっ…と」
「ああ、フィーは本当に美しいな。もう俺のものだ。俺もフィーのものだ」
「もう…。リアムだって花が似合うよ。つけてみてよ」
「いやだ」
「どうしてよ。僕にだけしておいて、ひどくない?」
「おまえは似合うからいいけど、俺は似合わないからだ」
「似合うよ」
「似合わない」
リアムの胸ポケットの花を取り、腕を伸ばして金髪につけようとするけど、リアムが逃げるから届かない。
「もう泣くのか?早いぞ」
「だって…うれし…っ」
「そうだな」
リアムが笑って僕の額にキスをして、首に何かをかけた。
「え?」と驚く僕の手に、緑色に輝く石がついたペンダントを握らせる。
僕は手の中のペンダントを見て疑問を口にする。
「これは…?」
「俺の首にかけてほしい」
「え?…あ、うん」
リアムが頭を下げる。
僕は少し背伸びをして、リアムの首にペンダントをかけた。
顔を上げたリアムが、緑色の石を摘みながら「どうだ。キレイだろう。おまえの瞳の色だ」と笑う。
「うん…きれい」
「フィーには、俺の瞳の色と同じ、紫の石だ」
「え…」
僕は顔を下に向けて、胸の前で光る石を見た。
本当だ。とても美しい紫の石。そうか。リアムが僕の瞳の色を、僕がリアムの瞳の色を、それぞれが身につけるのか。
「嬉しい…ありがとう、リアム」
「ああ、また泣かせてしまったな」
僕は声を震わせながら、リアムを見上げた。
リアムが困った顔で、僕の頬に流れる涙を拭う。
「イヴァルにも有名な鉱山があるが、これはバイロンで採れた石だ。俺が記憶をなくす前に、石をペンダントにするよう頼んでいたんだ。いろいろあって取りに行けてなかったんだが、いつまでも引き取りに来ない俺を心配して、職人がちょうど城を訪ねてきたらしい。それをゼノが預かってくれていたんだ」
「そんな前から…嬉しい」
「俺が記憶をなくさなければ、もっと早くに渡せていた…ごめんな」
僕は強く首を振る。
振動に合わせて胸の上で紫の光がキラキラと揺れる。
「僕…なにも用意してない。リアムになにも渡せないよっ…」
「なにも無いことはないぞ。俺はおまえから様々なものをもらった。それにほら、これもある」
リアムが上着のポケットから小さな袋を取り出した。
「あっ、それっ。僕も持ってる!」
僕も急いでポケットから同じような袋を取り出す。この中には、お互いの髪が入っている。肌身離さず持っている宝物だ。
「うん。俺はこれを持っていたおかげで、いつでもフィーが傍にいるように感じてがんばれた。おまえだってそうだろ?」
「うんっ、うんっ!」
「それに、髪を切りたいと話してたな。切った後のこの美しい銀髪、俺にくれよな」
「え?本当にいるの?」
「もちろん」
キレイにとかし後ろに流している僕の銀髪を、ひと房つまんで、リアムが口づける。
今朝、ノラさんに頭に花飾りをつけられそうになって、全力で止めた。
さすがに花は恥ずかしいからだ。
ノラさんは「かわいらしいのに」と不服そうにしながら、僕の上着の胸ポケットにその花をさした。
それを今、リアムが僕の髪にさす。
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「ああ、フィーは本当に美しいな。もう俺のものだ。俺もフィーのものだ」
「もう…。リアムだって花が似合うよ。つけてみてよ」
「いやだ」
「どうしてよ。僕にだけしておいて、ひどくない?」
「おまえは似合うからいいけど、俺は似合わないからだ」
「似合うよ」
「似合わない」
リアムの胸ポケットの花を取り、腕を伸ばして金髪につけようとするけど、リアムが逃げるから届かない。
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