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「おはようリアム。どこに行ってたの?」
「ゼノのところへ。頼んでいたことがあったからな」
「ふーん?起きたなら僕も起こしてくれればよかったのに。目覚めた時に隣にいなくて寂しかった…」
「うぐっ…」
「どうしたの?」
変な声を出して、リアムが僕の肩に顔を埋める。
僕は振り向き首を小さく傾けた。
「いや…。フィーは何をしていたんだ?」
「ほら、鳥が鳴いてる。どこにいるか探してたんだ」
「…本当だ。鳥の鳴き声など気にしたこともなかったが、こうやって聞くとかわいらしいな。さて、そろそろ朝餉を食べて準備をしようか」
「うん。晴れてよかったね」
「ああ。きっと良い日になる」
僕とリアムは見つめ合い、そっと唇を合わせた。
城の東側にある礼拝堂は、真っ白な壁に太陽の光が反射して、とても神々しく輝いている。それに礼拝堂の周りには、緑豊かな木々や色とりどりの花が植えられており、とても美しい。
僕が声も出せずに礼拝堂に見とれていると、リアムに笑われた。
「フィー、ぼんやりするなよ?今日のことはしっかりと覚えていてくれよな」
「…え?あ、わかってるよっ。礼拝堂があまりにもキレイで…本当にここで式を挙げてもいいのかな」
「いいに決まってる。なあジル」
「はい」
扉の前で待機しているジルが、笑って頷く。
僕とリアムは、ジルとノラに案内されて礼拝堂の前に来た。
礼拝堂の中では、ラシェットさんとゼノ、ラズールの三人が待っている。
ラシェットさんに仕えるユフィやテラ、他の騎士や使用人達のたくさんの人が式に立ち会いたいと願い出たらしいけど、ラシェットさんが却下した。二人だけで静かに式を挙げさせてやりたいと言ってくれた。でもラズールが絶対に見届けたいと譲らなかった。だからバランスを取って、リアムの側近のゼノが参加することになった。そして神父の役をラシェットさんが担ってくれる。
ラシェットさんには、感謝しかない。リアムのことを、実の息子以上に思ってるからだろうけど、僕にもとても親切に接してくれる。これからは本当の父親のように甘えてほしいとも言われた。僕には父上の記憶がない。常にラズールが甘えさせてくれたが、ラズールは父というより兄のような存在だ。だからラシェットさんの言葉は嬉しかった。
「どうした、静かだな。緊張してる?」
「…してる。だって一生に一度のことだよ?つまづいたりしたら…どうしよう」
「ははっ!心配するな。俺が受け止めてやる」
「うん…リアムは緊張しないの?」
「ああ。嬉しくて仕方がない。ずっとこの日を待ち望んでいたからな!」
「うん、そうだね。僕も嬉しいっ」
「では行くか。永遠の愛を誓いに」
「リアム、僕を放さないで」
「何があっても放さない」
僕はリアムの腕をしっかりと掴んで前を向く。
ジルとノラの手によって、重厚な扉がゆっくりと両側へと開く。
正面奥にある大きな窓から差し込む光が眩しくて、一瞬目の前が真っ白になった。
「ゼノのところへ。頼んでいたことがあったからな」
「ふーん?起きたなら僕も起こしてくれればよかったのに。目覚めた時に隣にいなくて寂しかった…」
「うぐっ…」
「どうしたの?」
変な声を出して、リアムが僕の肩に顔を埋める。
僕は振り向き首を小さく傾けた。
「いや…。フィーは何をしていたんだ?」
「ほら、鳥が鳴いてる。どこにいるか探してたんだ」
「…本当だ。鳥の鳴き声など気にしたこともなかったが、こうやって聞くとかわいらしいな。さて、そろそろ朝餉を食べて準備をしようか」
「うん。晴れてよかったね」
「ああ。きっと良い日になる」
僕とリアムは見つめ合い、そっと唇を合わせた。
城の東側にある礼拝堂は、真っ白な壁に太陽の光が反射して、とても神々しく輝いている。それに礼拝堂の周りには、緑豊かな木々や色とりどりの花が植えられており、とても美しい。
僕が声も出せずに礼拝堂に見とれていると、リアムに笑われた。
「フィー、ぼんやりするなよ?今日のことはしっかりと覚えていてくれよな」
「…え?あ、わかってるよっ。礼拝堂があまりにもキレイで…本当にここで式を挙げてもいいのかな」
「いいに決まってる。なあジル」
「はい」
扉の前で待機しているジルが、笑って頷く。
僕とリアムは、ジルとノラに案内されて礼拝堂の前に来た。
礼拝堂の中では、ラシェットさんとゼノ、ラズールの三人が待っている。
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ラシェットさんには、感謝しかない。リアムのことを、実の息子以上に思ってるからだろうけど、僕にもとても親切に接してくれる。これからは本当の父親のように甘えてほしいとも言われた。僕には父上の記憶がない。常にラズールが甘えさせてくれたが、ラズールは父というより兄のような存在だ。だからラシェットさんの言葉は嬉しかった。
「どうした、静かだな。緊張してる?」
「…してる。だって一生に一度のことだよ?つまづいたりしたら…どうしよう」
「ははっ!心配するな。俺が受け止めてやる」
「うん…リアムは緊張しないの?」
「ああ。嬉しくて仕方がない。ずっとこの日を待ち望んでいたからな!」
「うん、そうだね。僕も嬉しいっ」
「では行くか。永遠の愛を誓いに」
「リアム、僕を放さないで」
「何があっても放さない」
僕はリアムの腕をしっかりと掴んで前を向く。
ジルとノラの手によって、重厚な扉がゆっくりと両側へと開く。
正面奥にある大きな窓から差し込む光が眩しくて、一瞬目の前が真っ白になった。
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