銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

文字の大きさ
上 下
345 / 451

52

しおりを挟む
「あの…赤い痣が背中にも広がったら死ぬかもしれないって…話はしたよね?」
「ああ、聞いた」
「実は…赤い痣が出てき始めた頃から、身体が痛い」
「…どんなふうに?」
「黒い蔦から無数のトゲが生えて、それで全身を刺されるような痛み…」
「ずっとか?」
「ううん、波がある。でも痛みの間隔が、だんだんと狭くなってきてる」 
「どれくらいの間隔だ?」
「一刻はもたないかも…。今はラズールがね、頻繁に痛みを和らげる治癒魔法をかけてくれているの」
「ああそれで。おまえ達二人が、何かコソコソ話してるなぁと思っていたんだ」
「気づいてたの?黙っててごめんね…」
「いいさ。俺に心配かけさせまいと思ったんだろ?」
「うん…」

 リアムが大きな手で僕の背中を何度もさする。そして僕の頬にキスをして、「フィー」と優しく呼んだ。

「なに?」
「次からは俺も治癒魔法をかけよう。ラズール一人では負担が大きいだろう」
「いいの?ありがとう。僕が自分でかけられればいいのだけど、治癒魔法…苦手なんだ」
「自分の身体を治癒するのに自分でかけていたら、とんでもなく体力を消耗するじゃないか。おまえはもう、無理はしないでくれ。俺が守るから…甘えて頼ってくれ」
「リアム…。じゃあ後で治癒魔法をかけてくれる?ラシェットさんに会う前にラズールがかけてくれたんだけど…夕餉まではもたない」
「その痛みを完治させることはできないのか?」
「痣が消えない限りは無理だと思う。だからね、僕にはもう…時間がないんだよ」

 リアムが、今にも泣き出しそうな顔になる。息が苦しくなるくらい、僕を強く抱きしめて、掠れた声で何かを言ってる。
 聞き取りづらい言葉の意味を理解して、僕は胸が潰れそうになった。

「いやだ…そんなこと言うな…俺を置いて行くなよ…おまえがいないと、俺は生きていけない」

 そう何度も繰り返している。まるで呪文のように。
 僕は逆の立場を考えた。リアムがこの世からいなくなる想像をした。それはとても耐えがたいことだ。きっとすぐにリアムの後を追い、僕は自ら命を絶つ。リアムがいない世界で、僕も生きていけない。
 だけどねリアム、僕はあなたには生きていてほしい。僕がリアムの立場だったらできないことを、リアムにしてほしいと望むなんてひどいと思うけど、生き続けてほしいんだ。
 ラズールだってそうだ。生まれた時から傍にいる僕がいなくなることは耐えられないに違いない。だけど国のために生きて働いてほしい。
 僕ってひどい人間だなぁ…なんて思ったら、ふいに笑いが込み上げてきた。
 だけど僕の肩に顔を埋めて嗚咽を漏らすリアムに、笑ってるなんてバレたら軽蔑されてしまうかも。
 だから僕は、リアムの金髪を抱きしめて、形の良い耳に唇を寄せると「大丈夫だよ」と囁いた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

目が覚めたら異世界で魔法使いだった。

いみじき
BL
ごく平凡な高校球児だったはずが、目がさめると異世界で銀髪碧眼の魔法使いになっていた。おまけに邪神を名乗る美青年ミクラエヴァに「主」と呼ばれ、恋人だったと迫られるが、何も覚えていない。果たして自分は何者なのか。 《書き下ろしつき同人誌販売中》

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

処理中です...