銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

文字の大きさ
上 下
338 / 451

45

しおりを挟む
 僕とリアムが抱き合っている所にラズールが来て、引き剥がされた。

「なにやってるんですか。準備ができましたので出発します」
「おまえ…俺を敬う気持ちはないのか」
「俺の主はフィル様だけです。フィル様、これを。春の日差しでも、長くあたると肌が赤くなってしまいますからね。あと、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫…ありがとう」

 ラズールが僕にマントをかける。フードも被せて、前の紐もしっかりと結んでくれる。その時に小さく呪文を口にして、痛みを和らげる魔法をかけてくれた。
 顔を上げたラズールが「では参りましょうか」と僕の手を引く。

「待て。おまえにも話しておきたいことがある」

 すかさず止めるリアムを、ラズールがゆっくりと振り返った。

「先ほどの話なら聞こえていました。俺は…フィル様が幸せなら反対はしません。しかし、フィル様を泣かせるようなことをした時は、絶対に許しません」
「おまえに言われなくとも、フィーに辛い想いは絶対にさせない。…ありがとうな、ラズール」
「いえ…」

 ラズールがふい…と顔を背けて歩き出す。
 僕はリアムに笑って、ラズールに手を引かれるままに足を踏み出した。


 途中の街で二泊して、湖に着いた。
 家を出てからここに着くまで、ずっと晴れていた。だから長時間馬に乗って腰が痛くても楽しかった。二日目には宿に着くのが遅くなってしまったけど、無数の星が瞬く夜空を見れて感動した。
 そして今、青い空を映す、風もなく凪いだ湖を見て、また感動している。

「きれい…」
「そうだな。天気が良く風もないから、いつもよりもきれいだ。それに隣にフィーがいるからな」
「ふふ、そうかも」

 リアムと肩を並べて見る湖は、本当に美しかった。前に見たのは冬で、今は春だ。夏と秋の景色も見てみたい。リアムといると、次から次へと欲が出てきてしまう。イヴァルにいた頃の僕は、全てを諦めていたのに。愛する力ってすごい。
 リアムが僕の髪に触れながら聞く。

「寒くはないか」
「うん、大丈夫」
「フィーの髪、出会った頃よりも少し伸びたな」
「そう?長すぎてわかんない…。もう姉上のフリをしなくていいから、切りたいんだけど」
「この美しい髪をか?」
「うん…切ったら変かな」
「いや、短い髪のフィーもかわいいと思う。というか、本当に切るのか?もし切るなら、切った髪は俺がもらってもいいか?」
「…え?なんでっ?」
「フィーのものは全て欲しいからに決まってるだろ」
「えー…」

 リアムがそう言って、僕の髪にキスをする。
 僕は嬉しいような恥ずかしいような複雑な気持ちになって、愛おしそうに銀髪に唇を寄せるリアムを見つめた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

処理中です...