銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 家に戻るなりすぐに馬に乗って出かけると思っていた僕は、湖まで馬でも二日はかかると聞いて焦った。
 まだバイロン国の地理がよくわかってなくて、簡単に行ける場所にあると思い込んでいた。
 そうか…二日もかかるのか。それまで僕の身体は持つのだろうか。
 ラズールとゼノが、素早く荷物をまとめているのを待ちながら、黙って俯く僕の顔を、リアムが心配そうに覗き込む。

「どうした?元気がないぞ?」
「…大丈夫。ここから湖まで結構離れてたんだなぁって驚いてるだけ…」
「そんなに早く行きたかったのか?」
「うん、今日中に行けると勝手に思い込んでたから。泊まりになるとは思ってなくて…無理なお願いをしちゃったかな…って」
「無理なものか。俺はおまえに頼られると嬉しい。だが…」
「うん?」

 リアムが玄関に荷物を運ぶ二人を見て険しい顔をする。

「フィーと二人きりで行きたかった。なぜアイツらまでついて来るんだ?」
「ふふっ、ラズールが僕を心配するように、ゼノもリアムを心配してるからじゃない?」
「いや…ゼノも俺ではなくフィーのことを心配してるな。フィーの周りに過保護が増えた」
「そう?みんな僕のことを心配してくれて嬉しいよ。でも一番の過保護はリアムでしょ」
「当たり前だ。フィーは俺の伴侶だからな」
「伴侶…」
「フィー」
「はい」

 リアムが僕の肩を抱き寄せ、見上げた僕の額にキスをする。そして優しい声で言った。

「湖を見た後に、俺の伯父上に会ってほしい」
「会わせて…くれるの?」
「ああ。俺が信頼する伯父上に、俺の大切な人を紹介したい」
「ありがとう…」
「それと伯父上の城の中に、とても美しい礼拝堂がある。フィー」
「はい」

 リアムが僕の正面にまわり、とても真剣な顔をする。
 僕は緊張して顔がこわばった。

「その礼拝堂で、結婚式を挙げよう。永遠に共にいることを誓おう。…と、勝手に思ってるのだが…ダメか?」

 僕は驚きすぎて、一瞬声が出なかった。大きく開いた目から、涙が溢れ出る。何度も頷きながら声を絞り出す。

「うんっ…うんっ!結婚式…したい、誓いたいっ…。ありがとう…リアム」
「ははっ、本当に泣き虫。こんな所をラズールに見られたら怒られるな」
「ううっ…」

 リアムが僕を抱きしめた。
 僕もリアムの背中に手を回して、顔を胸に埋める。
 嬉しい嬉しい。こんなに幸せなことがある?リアムと結婚式を挙げたい。愛を誓いたい。呪われた身体でここまで生き延びたんだから、もう少し頑張ってよ、僕の身体。愛の力で呪いを弾き飛ばせたりできないのかな。
 そんな都合のいいことを思いながら、僕はリアムに必死にしがみついていた。

 
 
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