銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「フィル!なんでここにいるのっ?元気になったのかっ?」
「ノア…心配かけてごめんね。それに色々と助けてくれてありがとう」

 ノアに抱きつかれて少しよろけた僕を、リアムと後ろからラズールが支えた。
 僕の肩に顔を埋めて鼻をすするノアに、ラズールが冷たく言い放つ。

「おいおまえ。早くフィル様から離れろ。不敬だぞ」
「ラズール!ノアは僕の友達で命の恩人なんだから、そんな風に言わないで」
「しかし」
「文句があるなら帰ってもらうよ」
「…申し訳ありません」

 ラズールが不服そうにしながら階段下にいるゼノの位置まで下がる。
 僕が小さく息を吐いて「ノア」と言うと、ノアがようやく顔を上げた。

「ノア、なんて顔してるの」
「だってっ、フィルが元気で来てくれて嬉しいんだ。最後に会った時のフィルこそ、ひどい顔してたんだぞ。少し痩せた?」
「そうかな?ノアも元気そうでよかった」
「うん、俺は元気…って、リアム様、いらっしゃったんですか?」
「ようやく俺に気づいたか。もう十分再会の喜びを味わっただろう。早くフィーから離れろ」
「…なんかフィルの周りって、口うるさい人ばっかりだな」
「なんだと?」
「リアム!」

 リアムにギロりと睨まれて、ノアが慌てて僕から離れる。
 僕はリアムの袖を引き、「ノアに冷たくするならリアムも帰ってもらうよ」と口を尖らせた。
 そんな僕を見るなりリアムが優しい顔になり、僕の頬を撫でる。

「しない。だから帰らない」
「だそうだよ、ノア」
「なんか…この中で一番偉いのはフィルみたいだな。あ、ずっと立ち話でごめん。中に入って」
「ありがとう」

 扉を押さえるノアの前を通って中へ入る。
 ノアの家は、僕がリアムから離れて一人で困っている時に、助けて泊めてもらった時のままだ。とても懐かしい。
 入ってすぐの部屋に、大きな机と四脚の椅子がある。僕とリアムが並んで座り、向かい側の椅子をラズールとゼノがすすめられたが、二人は断って、ラズールが玄関前に、ゼノが窓の前に立った。
 そんな二人を見て、ノアが困った様子で聞いてくる。

「なんであの二人は座んないの?」
「ここは安全なんだけど、ああやって外を警戒するクセがついてるんだよ。気にしないで」
「そう?騎士も大変だな」

 ノアが二人に目を向けて息を吐き、待っててと奥へと消える。少ししてノアが平べったい木の箱に、紅茶を乗せて戻ってきた。

「高級な物ではないですけど…どうぞ」
「いきなり訪ねてきたのはこちらだ。気を使わなくていいぞ」
「いえ、本来ならこんな小屋に王子様を迎え入れることも失礼ですから」
「ああ、そのことだがな。俺はもう王子ではない」
「えっ?」
「僕も王じゃないよ」
「ええっ!」

 ノアの大きな声に、ラズールが「騒がしい小僧め」と眉間に皺を寄せた。
 
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