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「なぁ、この赤い花のような痣、薄くなってないか?」
「…え?」
疲れてぐったりと横たわっている僕の腕を撫でて、リアムが聞いてきた。
言われて両腕を布団から出して見るけど、部屋が薄暗くてよくわからない。
リアムが天井に向けて右手を振ると、暗くしていた部屋の灯りが明るくなった。
「あ……ほんとだ」
「な?これって呪いが薄れてきたってことじゃないか?」
「そう…かな」
「フィーを抱いてる時に、治癒の魔法もかけてみたんだ。それが効いてるのかも」
「そんなことしてたの?ダメだよ…治ったばかりのリアムの体調が悪くなっちゃう」
「大丈夫だ。俺は兄上からもらった解毒薬のおかげで、すっかり体力も戻ってる」
リアムが笑って、僕の前髪を撫でつけ額に唇を寄せる。
僕の呪いを消そうと、魔法を使ってくれたことは嬉しい。でもそれくらいのことでは、呪いは消えない。確かに赤い痣が薄くなってはいるけど蔦のような黒い痣はそのままで、しかも全身が痛い。腰周りが怠くて重いのは、リアムと愛し合った証だ。それとは違う、全身の痛み。蔦のような黒い痣に見えない無数のトゲがあり、そのトゲに刺されているような痛みを感じる。そのせいで、身体を動かすことができない。
僕はバレないように痛みに耐えて、リアムの胸に顔を寄せた。
「どうした?」
「…疲れた…眠い」
「そうだな。今夜はこのまま寝ようか。おやすみフィー」
「うん…おやすみ」
リアムが僕を包むように抱きしめる。すぐに頭の上から規則正しい寝息が聞こえ始めた。
僕は少しだけ顔を上げて、伏せられた金色の長いまつ毛を見つめる。
「リアムも疲れてたんだね。身体に毒が残って体力も落ちてたし、長い距離を強行に移動したし。僕のために家まで用意してくれて…ありがとう」
僕の呟きに、少しだけまつ毛が震えた。だけど目を覚ますことはなく、そのまま眠り続けている。
僕は再びリアムの胸に顔を伏せると、目を閉じて痛みに耐えていた。
痛みには波があった。痛みが引いた時に少し眠り、痛くなったら起きてを繰り返していたけど、どうにも我慢できなくなる。
僕はリアムの腕からそっと抜け出すと、ベッドを降りて静かに歩き、部屋を出た。
窓からの月明かりを頼りに進み、玄関らしき扉から外に出る。夜空を仰ぎながら玄関前の階段を降りていると、背後から「足下に注意してください。危ないですよ」と声がした。
「…え?」
疲れてぐったりと横たわっている僕の腕を撫でて、リアムが聞いてきた。
言われて両腕を布団から出して見るけど、部屋が薄暗くてよくわからない。
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「あ……ほんとだ」
「な?これって呪いが薄れてきたってことじゃないか?」
「そう…かな」
「フィーを抱いてる時に、治癒の魔法もかけてみたんだ。それが効いてるのかも」
「そんなことしてたの?ダメだよ…治ったばかりのリアムの体調が悪くなっちゃう」
「大丈夫だ。俺は兄上からもらった解毒薬のおかげで、すっかり体力も戻ってる」
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僕はバレないように痛みに耐えて、リアムの胸に顔を寄せた。
「どうした?」
「…疲れた…眠い」
「そうだな。今夜はこのまま寝ようか。おやすみフィー」
「うん…おやすみ」
リアムが僕を包むように抱きしめる。すぐに頭の上から規則正しい寝息が聞こえ始めた。
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「リアムも疲れてたんだね。身体に毒が残って体力も落ちてたし、長い距離を強行に移動したし。僕のために家まで用意してくれて…ありがとう」
僕の呟きに、少しだけまつ毛が震えた。だけど目を覚ますことはなく、そのまま眠り続けている。
僕は再びリアムの胸に顔を伏せると、目を閉じて痛みに耐えていた。
痛みには波があった。痛みが引いた時に少し眠り、痛くなったら起きてを繰り返していたけど、どうにも我慢できなくなる。
僕はリアムの腕からそっと抜け出すと、ベッドを降りて静かに歩き、部屋を出た。
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