銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 扉が閉まると同時にリアムが立ち上がり、カップを手に戻って来る。
 僕は差し出されたカップを受け取り、口をつけた。ほどよい熱さの紅茶が喉を通る。鼻から抜ける柑橘系の香りが気持ちを落ち着かせてくれる。
 僕が黙っているからか、リアムも無言で紅茶を飲み続ける。僕が飲み干すのを待って、リアムがカップを机に戻した。

 「フィー、俺に話したいことがあるのだろう?話せるか?」

 その言葉に、僕はピクンと肩を揺らしてリアムを見上げる。
 リアムが隣に座って僕の肩を抱き寄せ、顔を覗き込んだ。
 僕は小さく頷くと、リアムの唇にキスをする。そして緩慢な動きでシャツのボタンを外すと、肩から滑らせてシャツをベッドの上に落とした。
 優しく細められていた紫色の目が、少しだけ大きく開いた。冷たい指先が僕の胸に触れ、思わず「…ん」と声を出す。

「リアムの手…冷たい」
「悪い。無意識に触れてしまった。痣がまた広がったな…。しかしこれは、赤い花が咲いたようでキレイだ」
「ふふ、変なの。気持ち悪くないの?」
「全く。これを見せたかった?」
「うん…そう。どうしてこうなったのか、わかる?」
「…考えたくはないが、呪いが進んだとか言うのじゃないだろうな」
「そ…あっ」

 そうだよと言おうとしたのに、喉奥から恥ずかしい声が出てしまった。リアムが優しく僕の肌を撫でるせいだ。
 抗議をしようと開けた口を塞がれ、入ってきた熱い舌に舌をこすり付けられ強く吸われて喋れない。
 
「んっ、んぅ…」

 ちゃんと話そうと決心したのに、どうして邪魔をするの。
 僕は涙を浮かべて紫の目を見つめ、硬い胸を強く叩いた。
 ようやく唇が離れたが、まだ額と額はくっ付いている。

「痛いではないか」
「だって…リアムが話をさせてくれないんだもん!ちゃんと聞いてよっ…」
「悪かった…だから泣くな」

 ポロリと頬に零れた涙を指で拭って、リアムが僕の髪を撫でた。

「おまえの口から、なにか良からぬ言葉が出てきそうで…聞きたくなかった」
「でも…聞いてくれないと、向き合ってくれないと、困る…」
「ん、そうだな。ごめんな。最後まで聞くよ」

 僕は頷くと、リアムから少し身体を離した。そして赤い花を指で差す。

「これはね、リアムが言った通り、呪いが進んだ証拠なんだ。僕の予想にすぎないけど、まだ前にしか出ていないこの赤い痣が、背中にまで出たら…僕は死ぬ」
「…バカを言うな」
「呪いはね、本物だった。母上の部屋の隠された引き出しに、呪いが起きることになった原因と、王族のことが書かれた本を見つけたんだ。僕はね、代々受け継がれた呪いで死ぬ」
「ならば…」

 リアムが僕を強く抱きしめる。顔が強く胸に押しつけられて息ができない。

「ならば…俺が呪いを解く」

 頭の上から力強い声が響く。
 僕は口の中で小さく「無理だよ」と呟いた。

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