銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「リアム、気分はどう?」
「手足の痺れが治まってきた…。目も回らない」
「動けそう?」
「ああ、大丈夫だ」

 そう言って、リアムがゆっくりと起き上がり、ベッドから降りて立つ。少しふらついたけど、ベッドの周りを数回歩いてもう一度「大丈夫だ」と言った。
 僕はたまらずリアムに抱きついた。
 リアムも僕を抱きしめ返して、背中を撫でる。

「よかった…」
「心配かけたな。もう大丈夫だ」
「リアム…本当にいいの?もうこの城には戻れなくなるけど、僕と行ってくれる?」
「フィーよりも大切なものなどない。二度と放さないからな」
「うん…」

 ずっと一緒だよ。僕が死ぬまでの間は。
 心の中でそう答える。
 ゼノが棚の中からシャツとズボンと上着を出して、ベッドの上に置く。

「ではリアム様、着替えてください。その間に、俺はリアム様の部屋から荷物を持ってきます」
「待て」

 急いで出て行こうとするゼノを、クルト王子が止める。
 
「リアムの荷物なら、そこにまとめて置いてある。おまえ達が来ると予想した時から、用意してある。感謝しろ」
「え…?ありがとうございます…」

 クルト王子が顎で指し示した場所に、大きな四角いカバンがあった。カバンの上に、リアムの剣もある。
 僕は、まだ少し動きの鈍いリアムの着替えを手伝った。
「フィー、ありがとう」と笑うリアムに、僕の胸に好きが溢れる。それと同時に、少し痛みも感じた。胸が痛い。胸だけじゃない。背中も腕も。これはたぶん、痣が出ている場所全てだ。いよいよ…なのかもしれない。
 僕の表情が曇ったのだろう。
 リアムが僕の頬に触れて、心配そうに覗き込んできた。

「どうした?ここに来るまでに、どこか怪我でもしたか?」
「…ううん、少し疲れただけ。でもリアムと会えたから、元気になったよ」
「そう?何かあれば、すぐに言えよ?」
「うん、ありがとう」

 僕は笑った。病み上がりのリアムに、心配かけさせちゃダメじゃないか。まだ大丈夫。我慢できる。とにかく早くここを出よう。
 しかしラズールは騙せない。
 僕の手を取り、じっと目を見つめてくる。

「なに?大丈夫だから」
「本当に?俺の背中に乗りますか?」
「何言ってるの。歩くよ。ラズールは荷物を持ってよ」
「…フィル様」
「しつこくするなら、置いていくよ」
「…すいません」

 ラズールが僕から離れ、荷物に手を伸ばす前に、ゼノが荷物を持った。

「俺が持つから大丈夫だ。ラズール殿は、リアム様とフィル様の護衛を頼む」
「わかった」

「では急ぎましょう」と部屋を出るゼノに向かって、クルト王子が声をかける。

「そんなに慌てなくてもいい。誰もおまえ達を追ったりはしない。この建物から門まで、誰も近づかないよう命じてある。まだリアムは早く歩けないだろう。ゆっくりと進んで大丈夫だ」
「俺は…はっきり言って、まだあなたのことを信用できません。だが今は、あなたの言葉に縋るしかない。無事に王都を出た後、俺はリアム様について行きます。でも、もしも力が必要な時は呼んでください。すぐに駆けつけます」
「…そうか。期待しているぞ」
「はい…」

 
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