銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「ふん」と鼻を鳴らして、クルト王子がそっぽを向く。

「ゼノ」
「はい」
「これを使え」
「これは…。よろしいのですか?」
「いい。俺の気が変わる前に早くしろ。しかしこの鍵が無くて、どうやってここを開けるつもりだったのだ?」

 ゼノが、クルト王子から渡された紙のようなものを手に、少しだけ口端を上げる。

「魔法でぶち壊そうかと思ってました。こちらに魔法の力が強い方が二人もいますから」
「なるほどな」

 クルト王子が僕を見て、ニヤリと笑う。

「貴様の力を見てみたい気もする。やってみるか?」
「やりませんよ。せっかくの鍵があるのに。それに無理に開けたら、すぐに誰かが駆けつけてくるでしょう?」
「まあな。だが貴様らは無理に開けようと考えていたのだろう?」
「そうですね。追っ手が来ても、何としてでも逃げるつもりでしたよ」
「貴様は優しそうな見た目に反して、強くて怖いな」
「ありがとうございます」

 クルト王子の言葉を褒め言葉と受け取った僕は、少しだけ笑った。
「急げ」とラズールに促されて、ゼノが鍵を開ける。
 ゆっくりと扉が向こう側へと開くと、日が差し込む部屋の中央のベッドに、リアムが横たわっていた。
 眠るリアムの顔を見て、僕は少しだけ安堵する。
 よかった。鎖で繋がれてるわけではなかった。明るい部屋で、清潔なベッドで寝かされていた。部屋に閉じ込められてはいたけれど、ひどい待遇をされてなくてよかった。バイロン王に、息子を思う気持ちがあったということだろうか。

「フィル様、どうかリアム様へ声をかけてください」

 ゼノに背中を押されて、ベッドに近づく。
 僕は眠るリアムに顔を寄せると「リアム、起きて」と金髪を撫でた。
 リアムの長いまつ毛がふるふると震える。そしてゆっくりと目を開けて、しばらく天井を見つめている。

「僕だよ…会いたかった」

 緩慢な動きで、リアムの目が動く。紫の瞳に僕の顔が映った瞬間、リアムが目を見開き掠れた声を出した。

「…フィー、なぜ…?」
「助けに来たよ。僕と一緒にここを出よう。これからは、ずっと一緒だよ」
「本当に…?国は…?」
「あとで詳しく話すけど、僕はもう、王じゃない。自分の意思で動ける。だから…リアムの傍にいたいんだ…けど、ダメかな」
「ダメ…なものか。嬉しい…」
「よかった」

 リアムの手が伸びて、僕の頬に触れる。
 でもその手が震えていることに気づいて、僕は慌てて袋から薬を出してゼノを呼ぶ。

「ゼノ!水を持ってきて!薬を飲ませるっ」
「はいっ」

 僕は手のひらに乗った黒く丸い薬を見ると、口に運んで飲み込んだ。
 
「フィル様っ、なにを!」
「毒味だよ。一応、確認しないとね…」
「だからと言って、あなたが飲む必要はない!俺に命じてくださればっ」

 ラズールが僕の腕を強く掴んで痛い。
 ラズールの手に手を重ねて小さく首を振る。
 この先も生き続けるラズールに、頼むわけないじゃない。という言葉を口にはしないけど。
 僕はクルト王子に振り向き微笑んだ。

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