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クレンさんの店の二階で、用意されていた服に着替えた。バイロン国の青い軍服だ。
ジルやユフィやテラは、黒い軍服を着ていた。この国では王都を守る騎士は青で、王都以外の騎士は黒なのだそう。
そういえば、前にリアムは黒の軍服を着ていた。あれはラシェットさんの所の軍服だったのか。金髪が映えてとても素敵だった。リアムは黒でも青でもどちらを着ても似合ってしまうのだけど。
僕は青の軍服に袖を通しながら、不安を口にする。
「ゼノ、王都軍の軍服を着ていても、僕とラズールは怪しまれるんじゃないかな」
僕を手伝ってくれながら、ゼノが優しく笑う。
「大丈夫です。王都内の騎士は、入れ替わりが激しい。優秀な者はずっと王直属の軍にいますが、それ以外はすぐに王城を出される。王は、常に優秀な人材を求めていますので」
「では、見慣れぬフィル様と俺がいても怪しまれないのか」
すでに着替え終わったラズールが、腰に剣を差している。
「そうだ。だが派手な動きはしてはならない。慎重に動こう。王は用心深いからな」
「わかった。フィル様、俺がついてますのでご安心を」
「うん、頼りにしてる」
僕が頷くと、ラズールが僕を椅子に座らせて髪を結い始め、カツラをかぶせた。
クレンさんの店を出る時に、クレンさんが僕に腕輪をくれた。きれいな緑色の石がはめ込まれた腕輪だ。
「腕を出してください」と言われて素直に出した僕の腕に、クレンさんがつけてくれたんだ。
「えっ、これは?」
「美しいでしょう。あなたの瞳と同じ色の石です。必ずあなたを守ってくれます。どうかもらってください」
「でもっ」
「俺があなたに持っていてほしいのです。そしていつか、リアム様と一緒に店に来てください。待ってますから」
「うん…必ず。ありがとう」
僕は腕輪の石に触れて、心の中で何回目かの誓いを立てる。
僕は必ずリアムを牢から出して、毒からも回復させる。もしも上手く解毒できなければ、残り少ない僕の命をリアムに移す。姉上にはできなかった魔法を使って。
「クレンも気をつけて」
「俺は大丈夫です」
僕が頷いて外に出ると、ラズールとゼノも順番に出てきた。そして道がわからないからとゼノに先頭に立ってもらい、僕、ラズールと後に続く。
「王都は人が多い。離れずについて来てくださいね」
「わかった」と返事をしたものの、賑やかな様子が気になって、キョロキョロとよそ見をしてしまう。
歩みが遅くなるたびにラズールに背中を押され、王城の前まで来た。
ジルやユフィやテラは、黒い軍服を着ていた。この国では王都を守る騎士は青で、王都以外の騎士は黒なのだそう。
そういえば、前にリアムは黒の軍服を着ていた。あれはラシェットさんの所の軍服だったのか。金髪が映えてとても素敵だった。リアムは黒でも青でもどちらを着ても似合ってしまうのだけど。
僕は青の軍服に袖を通しながら、不安を口にする。
「ゼノ、王都軍の軍服を着ていても、僕とラズールは怪しまれるんじゃないかな」
僕を手伝ってくれながら、ゼノが優しく笑う。
「大丈夫です。王都内の騎士は、入れ替わりが激しい。優秀な者はずっと王直属の軍にいますが、それ以外はすぐに王城を出される。王は、常に優秀な人材を求めていますので」
「では、見慣れぬフィル様と俺がいても怪しまれないのか」
すでに着替え終わったラズールが、腰に剣を差している。
「そうだ。だが派手な動きはしてはならない。慎重に動こう。王は用心深いからな」
「わかった。フィル様、俺がついてますのでご安心を」
「うん、頼りにしてる」
僕が頷くと、ラズールが僕を椅子に座らせて髪を結い始め、カツラをかぶせた。
クレンさんの店を出る時に、クレンさんが僕に腕輪をくれた。きれいな緑色の石がはめ込まれた腕輪だ。
「腕を出してください」と言われて素直に出した僕の腕に、クレンさんがつけてくれたんだ。
「えっ、これは?」
「美しいでしょう。あなたの瞳と同じ色の石です。必ずあなたを守ってくれます。どうかもらってください」
「でもっ」
「俺があなたに持っていてほしいのです。そしていつか、リアム様と一緒に店に来てください。待ってますから」
「うん…必ず。ありがとう」
僕は腕輪の石に触れて、心の中で何回目かの誓いを立てる。
僕は必ずリアムを牢から出して、毒からも回復させる。もしも上手く解毒できなければ、残り少ない僕の命をリアムに移す。姉上にはできなかった魔法を使って。
「クレンも気をつけて」
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僕が頷いて外に出ると、ラズールとゼノも順番に出てきた。そして道がわからないからとゼノに先頭に立ってもらい、僕、ラズールと後に続く。
「王都は人が多い。離れずについて来てくださいね」
「わかった」と返事をしたものの、賑やかな様子が気になって、キョロキョロとよそ見をしてしまう。
歩みが遅くなるたびにラズールに背中を押され、王城の前まで来た。
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