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「ラシェットさんは、今夜はここに泊まるの?」
「いえ、今すぐ出発します。動向を見張られていますから。ここに長居すると危険だ」
僕はドキリとする。
ラズールからも緊張している気配を感じる。
「ラシェットさん…僕と会って大丈夫だった?」
「長く話し込んではいないので、大丈夫です。それにラシェット様の部下であるジルとユフィとテラが、ラシェット様と共に城へ戻りますので、ここで彼らと待ち合わせていただけだと、王の元へ報告が上がるでしょう」
ゼノが柔らかく笑う。
その表情は、僕を安心させる。
僕もホッと小さく息を吐いたけど、また疑問を口にした。
「ゼノは?一緒に戻らないの?」
「戻りません。フィル様のお傍を離れません。それにご存知でしょうが、俺はリアム様の側近ですよ。フィル様と同じく、何としても助け出したいと思ってます。それに王城の中に詳しい者がいた方が効率がいい。ですので、どこまでもご一緒します」
「危険だよ?」
「承知してます。ですからフィル様をお守りします。まあラズール殿がいるので、俺の出番はないでしょうが」
「そう…ありがとう」
僕は自然と頭を下げた。
例えばリアムの配下の者達で助けに行くのと、敵国である僕と助けに行くのとでは、捕まった場合の罰が違う。前者は忠臣としての行動だとそこまでの罪にならないかもしれないけど、後者だと処刑されるかもしれない。
だから本当は、僕とラズールだけで助けに行くつもりだった。僕が命を呈して二人を逃がすつもりだった。
でも…そうだよね。ラズールが僕を想うように、ゼノにとってもリアムは大切な主だ。人に任せて待ってるなんてできないよね。
「フィル様。俺なんかに頭を下げないでください。フィル様がいなくても、俺一人で助けに行くつもりでしたから。大丈夫です。警備が手薄な場所や、利用されていない廊下や部屋など、王城内のことはよく知ってます。必ずリアム様を助け出し、ラシェット様の城へ行きましょう。皆で行きましょう」
僕は顔を上げてゼノの目を見た。
ゼノが深く頷く。
今度は隣のラズールを見上げた。
ラズールが僕の手を握りしめ、「大丈夫ですよ」と囁いた。
灯りを背にしたラズールの顔は、よく見えなかったけど、今にも泣き出しそうに見えた。
「いえ、今すぐ出発します。動向を見張られていますから。ここに長居すると危険だ」
僕はドキリとする。
ラズールからも緊張している気配を感じる。
「ラシェットさん…僕と会って大丈夫だった?」
「長く話し込んではいないので、大丈夫です。それにラシェット様の部下であるジルとユフィとテラが、ラシェット様と共に城へ戻りますので、ここで彼らと待ち合わせていただけだと、王の元へ報告が上がるでしょう」
ゼノが柔らかく笑う。
その表情は、僕を安心させる。
僕もホッと小さく息を吐いたけど、また疑問を口にした。
「ゼノは?一緒に戻らないの?」
「戻りません。フィル様のお傍を離れません。それにご存知でしょうが、俺はリアム様の側近ですよ。フィル様と同じく、何としても助け出したいと思ってます。それに王城の中に詳しい者がいた方が効率がいい。ですので、どこまでもご一緒します」
「危険だよ?」
「承知してます。ですからフィル様をお守りします。まあラズール殿がいるので、俺の出番はないでしょうが」
「そう…ありがとう」
僕は自然と頭を下げた。
例えばリアムの配下の者達で助けに行くのと、敵国である僕と助けに行くのとでは、捕まった場合の罰が違う。前者は忠臣としての行動だとそこまでの罪にならないかもしれないけど、後者だと処刑されるかもしれない。
だから本当は、僕とラズールだけで助けに行くつもりだった。僕が命を呈して二人を逃がすつもりだった。
でも…そうだよね。ラズールが僕を想うように、ゼノにとってもリアムは大切な主だ。人に任せて待ってるなんてできないよね。
「フィル様。俺なんかに頭を下げないでください。フィル様がいなくても、俺一人で助けに行くつもりでしたから。大丈夫です。警備が手薄な場所や、利用されていない廊下や部屋など、王城内のことはよく知ってます。必ずリアム様を助け出し、ラシェット様の城へ行きましょう。皆で行きましょう」
僕は顔を上げてゼノの目を見た。
ゼノが深く頷く。
今度は隣のラズールを見上げた。
ラズールが僕の手を握りしめ、「大丈夫ですよ」と囁いた。
灯りを背にしたラズールの顔は、よく見えなかったけど、今にも泣き出しそうに見えた。
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