銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

文字の大きさ
上 下
303 / 451

10

しおりを挟む
 僕とラズール、ゼノとジルは同じ部屋だ。
 ラズールが部屋を分けろと抗議していたが、ゼノが同室の方が安全だと説き伏せていた。
 僕もラズールと二人より、周りがバイロン国の兵に囲まれている宿の中では、ゼノとジルがいる方が心強い。そうラズールに言うと、渋々頷いていた。
 黙々と食事を終え食器類を下げてもらい、これからのことを相談しようとしたその時、誰かが扉を叩いた。
 僕は緊張して身体を固くし、ラズールが警戒して腰に差した剣の柄を掴む。
 ゼノがそんな僕達を手で制すると、ジルが扉に近づき「来たのか」と聞いた。

「ユフィとテラです。入ってもよろしいですか」
「ああ、入れ」

 ジルが扉を開ける。
 細く開いた隙間から、二人の騎士がするりと入ってきた。

「ジル様、ゼノ様、お姿が見えないので心配していました。無事に合流できてよかったです」
「本当に…ドキドキしましたよ?」

 凛々しい顔つきの騎士が丁寧に話し、少し幼い雰囲気の騎士が明るく喋る。
 二人はゼノとジルに声をかけて、僕とラズールを見て動きを止めた。

「あなたは確か、隣国の」

 凛々しい顔つきの騎士が僕に向かって膝を折る。
 もう一人の騎士が「え?」と不思議そうに隣の騎士と僕を見比べている。

「君もリアムの部下なの?名前は?」
「はい。ユフィと申します。以前にお会いしたことがあります」
「僕がゼノの奴隷としてバイロン国にいた時だね。確かリアムの軍にいたね」
「そうです。覚えていてくださって嬉しいです」
「隣の君もいたよね」
「え?俺?ってか君は誰?」

「おい」とラズールが、ユフィの隣で戸惑っている騎士を睨む。
 僕は今にも怒鳴りつけそうなラズールの腕を引いて止めると、ゼノに聞いた。

「彼らも味方だね?僕のことを話してもいい?」
「はい、大丈夫です。彼らは信用できます」
「そう。こうやって面と向かって挨拶をするのは初めてだね。僕はイヴァル帝国の王、フィルと言います。リアムを助けに来たんだ。君達にも協力してほしい」
「もちろんです」

 ユフィが頭を下げる。僕のことを知っていたようだ。
 隣の騎士は「えっ!」と叫ぶと、慌てて膝を折り頭を下げた。

「無礼をお許しください!俺はテラと言います。リアム様をお助けできるのなら、何でもします!」
「テラだね。よろしく」
「はい!…あの」
「どうしたの?」

 テラがゆっくりと顔を上げ、僕と目が合うと慌てて伏せる。

「とりあえず二人とも立って。ここにいる皆は仲間だから。僕を特別扱いしないでほしいな」
「はあ…」

 テラが間の抜けた返事をしながら立ち上がろうとする。
 それをユフィが止めたので、僕はもう一度言う。

「ユフィも立って。そんなに堅苦しくしてたら気軽に相談もできないじゃないか」
「…わかりました。そちらの方もよろしいですか?」

 ユフィがラズールに向かって聞く。
 僕の隣に立つラズールを見上げると、とても不服そうな顔をしていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

目が覚めたら異世界で魔法使いだった。

いみじき
BL
ごく平凡な高校球児だったはずが、目がさめると異世界で銀髪碧眼の魔法使いになっていた。おまけに邪神を名乗る美青年ミクラエヴァに「主」と呼ばれ、恋人だったと迫られるが、何も覚えていない。果たして自分は何者なのか。 《書き下ろしつき同人誌販売中》

処理中です...