銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 僕は話した。
 身体に巻きつく蔦の呪いが進んで、僕はもうすぐ死ぬだろうこと。だから、元をたどれば同じ血族のネロに、王の座を譲るつもりだということ。そしてこれからバイロン国に行き、牢に入れられているリアムを助けたいこと。死ぬ前にリアムに会いたいということを。
 途中、レナードが声を出そうとしたけど、トラビスが止めた。
 ゼノは静かに聞いていた。
 全て話し終わって、僕は小さく息を吐き出す。
 しばらくの沈黙の後に、ゼノが口を開いた。

「…フィル様は、クルト王子が撤退する時に、バイロン軍に紛れ込むおつもりですか?」
「そうだよ。だから、ゼノにはまた、協力をお願いしたいんだ」
「かしこまりました。今回はフィル様おひとりですね?」
「あ…いや、それが」

 言い淀んだ僕の言葉を拾って、トラビスが立ち上がる。

「まさかっ、ラズールがついて行くのですか!アイツ…納得したと聞いておかしいと思ってたんだ。 そうか、意地でも傍を離れない気だなっ。ならば俺も…」
「トラビス、座って。おまえは大切な役目があるだろう?それとこれも頼みたい」
「…なんですか?」

 再び腰を下ろしながら首を傾げるトラビスに、僕は上着のポケットから手紙を出した。

「これを…大宰相と大臣達、そしてネロに渡してほしい」

 そう言いながら、手紙をトラビスの前へ押しやる。
 トラビスはじっと机の上の手紙を見つめて「これは…」と呟いた。

「今後のことを書いてある。僕がいなくなった後、トラビスはネロの側近として支えるように。レナードは将軍となり、王と国を守ってほしい」
「フィル様…」

 トラビスが手紙を手に取り頭を垂れる。
「あ…」と声がして、そちらに目を向けると、レナードが机の上で固く手を握りしめていた。
 僕は、その手に手を乗せて、レナードの顔を覗き込む。

「レナード、言いたいことがあったら遠慮なく言ってよ」

 レナードは少しの間ためらって、意を決したように僕と目を合わせた。

「今の話を聞いていると、フィル様とはもう、会えないということですか…」
「そうだよ」
「呪いを解く方法はないのですか?そもそも、呪いなどあるのですか?死ななければ王を続けてくださいますか?」
「呪いはあるよ。でも解く方法はないから王は続けられない」
「やってみなければわかりません」
「わかる。実際に呪いで死んだ例があるんだ」
「なぜそのようなことを知ってるのですか」
「…母上の部屋で、代々の王族のことが書かれた本を見つけた。その中に女王でなければならない理由とか呪いのことが書いてあったんだ。王城に戻ったら、皆で読んでみてよ。僕の部屋の机の引き出しに入ってるから」

 
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