274 / 451
22
しおりを挟む
中に入ってきた僕を見て、部下と話していたレナードが目を丸くする。そして部下を下がらせると感嘆の言葉を口にした。
「これは…お美しいです」
「ドレスがでしょ?ただの女装だよ」
「いえ、そのようなことは。ところで後ろにいる騎士は?クルト王子について来た者ですか?」
「そうだよ。この人を、ここで見張っていてほしい」
そう言って僕が横によけると、ゼノが少し前に出た。
魔法で拘束されているゼノの両手を、レナードが無言で見つめている。
「フィ…フェリ様、何があったのですか?」
「クルト王子のもう一人の部下が、僕に剣を向けた」
「なんと!しかし大丈夫…そうですね。トラビスかラズールが防ぎましたか」
「ラズールが僕をつき飛ばそうとしたけど間に合わなかった。不思議なのだけど…リアムは僕の左腕を斬り落とすことができたのに、先ほどの騎士の剣は、僕の身体に刺さらなかった。どうしてだと思う?」
「それは腕であったからであって、リアム王子の剣でも身体を傷つけることはできないのでは?」
「そう…なのかな」
レナードの考えに、半信半疑ながらも納得する。そうかなとは考えていた。痣は胴体を守ってはいるけど、手足は守れていないのだろう。では頭は?頭を矢で射抜かれると、僕は死ぬのかもしれない。
考え込んでしまった僕の傍で、ラズールがゼノの拘束を解いた。
レナードが驚いて大きな声で咎める。
「ラズール!何をしているっ」
「この者は三ヶ月前、バイロン国からフィル様を無事に逃がせてくれた恩人だ。失礼があってはならない」
「しかし、クルト王子の家来では」
「レナード」
「はっ」
僕が近づくと、レナードが返事をして片膝をついた。
「ゼノはリアムの側近だよ。クルト王子の家来じゃない」
「では、なぜクルト王子と共に来たのですか?」
「そうだね。僕もそれを聞きたい。ゼノ、教えて」
僕はクルリと向きを変え、今度はゼノに近づいた。
ゼノもレナードと同じように片膝をつき、頭を垂れる。
「ゼノ、顔を上げて。ねぇリアムは元気なの?今回のこと、なにか言ってた?」
ゼノの身体が微かに揺れた。ぎこちなく上げられた顔は苦しそうだ。
その顔を見て、僕の胸が不安に押しつぶされそうになる。早くなる鼓動を落ち着かせるように胸に手を当てて、ゼノに問う。
「…リアムの身に何かあったの?」
「これは…お美しいです」
「ドレスがでしょ?ただの女装だよ」
「いえ、そのようなことは。ところで後ろにいる騎士は?クルト王子について来た者ですか?」
「そうだよ。この人を、ここで見張っていてほしい」
そう言って僕が横によけると、ゼノが少し前に出た。
魔法で拘束されているゼノの両手を、レナードが無言で見つめている。
「フィ…フェリ様、何があったのですか?」
「クルト王子のもう一人の部下が、僕に剣を向けた」
「なんと!しかし大丈夫…そうですね。トラビスかラズールが防ぎましたか」
「ラズールが僕をつき飛ばそうとしたけど間に合わなかった。不思議なのだけど…リアムは僕の左腕を斬り落とすことができたのに、先ほどの騎士の剣は、僕の身体に刺さらなかった。どうしてだと思う?」
「それは腕であったからであって、リアム王子の剣でも身体を傷つけることはできないのでは?」
「そう…なのかな」
レナードの考えに、半信半疑ながらも納得する。そうかなとは考えていた。痣は胴体を守ってはいるけど、手足は守れていないのだろう。では頭は?頭を矢で射抜かれると、僕は死ぬのかもしれない。
考え込んでしまった僕の傍で、ラズールがゼノの拘束を解いた。
レナードが驚いて大きな声で咎める。
「ラズール!何をしているっ」
「この者は三ヶ月前、バイロン国からフィル様を無事に逃がせてくれた恩人だ。失礼があってはならない」
「しかし、クルト王子の家来では」
「レナード」
「はっ」
僕が近づくと、レナードが返事をして片膝をついた。
「ゼノはリアムの側近だよ。クルト王子の家来じゃない」
「では、なぜクルト王子と共に来たのですか?」
「そうだね。僕もそれを聞きたい。ゼノ、教えて」
僕はクルリと向きを変え、今度はゼノに近づいた。
ゼノもレナードと同じように片膝をつき、頭を垂れる。
「ゼノ、顔を上げて。ねぇリアムは元気なの?今回のこと、なにか言ってた?」
ゼノの身体が微かに揺れた。ぎこちなく上げられた顔は苦しそうだ。
その顔を見て、僕の胸が不安に押しつぶされそうになる。早くなる鼓動を落ち着かせるように胸に手を当てて、ゼノに問う。
「…リアムの身に何かあったの?」
11
お気に入りに追加
506
あなたにおすすめの小説

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
左遷先は、後宮でした。
猫宮乾
BL
外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる