銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「うおっ!びっくりした…どうしたフィル?」

 リアムが僕の髪に優しく触れる。
 思わず飛びついてしまったけど何と説明すればいい?僕がゼノに頼んで連れて来てもらったと言う?でもなんのためにと聞かれたら答えられない。
 僕はリアムにしがみついたまま必死で考える。  
 その時、ゼノが僕に向かって優しい声を出した。

「大丈夫ですよ。リアム様は俺がどんな人物かよく知っていますから」
「でもっ」
「俺がトラビス殿のことを黙っていたのも、理由があるとわかっていらっしゃいますから。そうですよね?リアム様」
「もちろんだ。ただ知っていたのかどうかを知りたかっただけだ。ゼノがこのことを全て知っていたとしても、罰を与えることはしない。俺はゼノを信頼しているからな」
「ありがとうございます。俺もリアム様を尊敬し信頼しています」
「まことか?」
「はい。その上で少し失礼なことを言います。よろしいですか?」
「なんだ?」

 僕は恐る恐るリアムを見上げた。
 リアムが僕の髪を撫でて頷く。
「フィル様、こちらへ」とトラビスが呼んだけど、僕はより一層にリアムにしがみついた。
 ゼノはなにを言うつもりなのだろう。少し怖い。

「俺がこの方を連れて来たこと、リアム様が忘れている記憶を思い出せば、納得してくださると思います」
「記憶…ねぇ。おまえ達は俺が記憶を失ってると騒ぐが、俺には失った記憶があるとは信じられない」

 僕の身体が小さく揺れる。
 リアムは記憶を失ってることを信じていないの?僕と出会ってからのことが、無かったことになってる?
 「どうした?」と聞くリアムに僕は首を振る。
 リアムが僕の髪を撫でながら話を続ける。

「だが確かに俺が覚えている日から半年が過ぎていた。目覚めるなり周りから大丈夫かと騒がれ、記憶がないと医師を集められ、挙句の果てに父上からおまえの怪我の原因となるイヴァル帝国に攻めこめと命令された。実際のところ、俺は何がなんだかわからずにここにいる」
「それも全て、リアム様が忘れていることを思い出せばよろしいかと」
「わかっている。だがどうやって思い出せというんだ?なあフィル」

 僕に話を振られても、なんて言えばいいかわからない。それにあなたの恋人ですと話して、先入観を与えたくない。
 
「大丈夫ですよ。近々思い出せると思います」

 ゼノがそう言うと、僕を見て微笑んだ。
 


 
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