銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 僕が見つめ続けているものだから、リアムが視線を元に戻す。そしてこれはリアムの癖だ。僕の髪を再び撫でた。

「おまえを傍に置きたいのは、そのような理由ではない。それにだな、今まで一度だってそのような人物を傍に置いたことはない!」
「…そうなの?」
「そうだ!あのな、俺自身驚いてることなんだが…どうやら俺は、おまえのことを愛しく思い始めている…らしい」

 リアムが困ったように笑う。
 僕という恋人がいるのに、僕を愛しいと話すリアムに複雑な心境になる。でも記憶がなくても、また僕のことを想ってくれるなんて、すごく嬉しい。
 僕は無意識に手を伸ばして、リアムの頬に触れる。
 リアムが一瞬目を見開いてから笑う。

「こんなことを聞いて嫌ではないか?受け入れてくれるか?」
「僕は…敵国の捕虜です。それに男です。それでもいいのですか?」
「関係ない。敵国だとも思っていない。そもそもこの戦、俺の本意ではなかった」
「そのようなこと…僕の前で話していいの?」

 ゼノと同じことを言ってると可笑しくなって、思わずふふ…と笑いがもれた。
 リアムが僕の手を掴んで、手のひらにキスをする。

「いい。フィル、俺の前では敬語はいらない。普通に話してくれた方がかわいいからな。それに先ほど高貴の出自だと言ってたな。それは初めからわかっていた。立ち居振る舞い容姿から品位を感じる」
「…ありがとう」
「ところで返事は?俺の傍にいてくれるか?」

 もちろんいたい。だけどずっとという訳にはいかない。ある程度の期間で区切りをつけて、国に戻るのだから。でも今は…。

「はい、よろしくお願いします」
「よし!早速ゼノに話しに行くか」
「あ…その必要はないと思う。あそこに…」
「なに?」

 僕はリアムの背後に目を向けた。
 リアムも後ろを向き「ははっ」と笑う。
 ゼノとトラビスが、とても険しい様子で、大股でこちらに近づいてくる。
 リアムは僕の肩を抱き寄せると、ゼノに向かって手を上げた。

「悪いな、捜してたのか?」
「ええ、必死で捜しましたよ」

 僕とリアムの少し手前で、ゼノが立ち止まる。
 トラビスはゼノの横を通り過ぎて僕の方へ来ようとしたが、ゼノに腕を引かれて止められた。
 トラビスがゼノを睨む。

「離せ」
「落ち着け」
「無理だな」
「いいから落ち着け」

 低く静かな声で繰り返すゼノの言葉に、トラビスが不服そうな顔をする。
 トラビスの不審な態度に正体を追求されやしないかと、僕はハラハラしていた。

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