銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 会えなくとも、すぐ近くにリアムがいるということは嬉しい。周りが敵だらけの中にいるというのに、不安はなく嬉しい。


 翌朝、リアムと身分の高い数十人の騎士達が、先に王都に戻るらしく宿を出発した。
 当然その中にゼノも入っている。しかしゼノは僕を連れているために、隊から少し離れてついて行く。このように特別な行動が許されているのも、ゼノがリアムの信頼が厚いからなのだろう。
 でもやはり僕のことが気になるらしく、隊の後方にいる騎士達が、チラチラとこちらを見てくる。
 トラビスは隊の最後尾にいて、こちらを見てくる騎士達の視線を遮るように馬を移動させて威嚇している。
 しかしついには一人の騎士が、馬の足を遅らせてゼノの隣に並んだ。

「列を乱すな、ジル」
「いやぁ、だが気になるじゃないか。おまえが自ら馬に乗せてる人物のことが」
 「…仕方なく理由あって捕虜にした少年だ。俺の部下として育てる」
「ふーん。男か?きれいな顔をしてるけど」

 ジルと呼ばれた騎士が、僕の顔を下から覗き込む。
 僕はマントを引っ張って、顔の半分を隠した。

「あらら、そんなに用心しなくても。ゼノの捕虜だから俺は手出ししないぜ。しかし…おまえは女に興味がないと思ってたら、そういうことか」
「は?バカなことを言うな。この者は部下にすると言ってるだろうが」
「そんなにムキになるな。悪かったよ。リアム様からお許しをもらってるんだろ?他の者にもちょっかい出さないように俺がきつく言っておく」
「…ふん」

 ジルが笑って手を上げて、隊に戻っていく。
 僕はそっとゼノを振り返り「大丈夫?」と聞いた。

「申しわけありません。嫌な思いをさせましたか?」
「嫌な思いをしたのはゼノじゃない?ごめんね、僕のせいで…」
「フィル様は悪くありません。俺があなたをここまで連れて来たのです。しかし…」
「なに?」
「いえ、たとえ銀髪や顔を隠しても、皆があなたに興味を持つ」
「それは怪しいからじゃないの?」
「違います。高貴なオーラというか、美しさも隠しきれてませんし」

 なにを言ってるんだと僕は首を傾げて前を向く。そして小さく「ひっ」と悲鳴を上げた。
 隊の中央にいるリアムが、僕を見ていたからだ。
 気づかれた?いや、記憶がないから僕をフィルとして見ているわけじゃない。だけど旗の下で会った男だと気づいた?それともただ単に怪しい人物だと疑っているのか。
 リアムがこちらを見ていたのは一瞬で、すぐに顔を前に戻す。
 僕がホッと息を吐き出していると、今度はトラビスが隣に来た。
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