銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 昨日の夕刻にバイロン国に入り、国境近くの宿に止まった。そして今朝早くに、二人の従者を先に王城に帰した。
 俺とゼノは王城には戻らずに、ある場所へと向かう。朝から馬を飛ばして休憩を挟みながら、日が暮れる前に目的地に着いた。
 馬を降りて草むらに腰を下ろした俺の横に、ゼノが立つ。

「リアム様、ラシェット様に挨拶に行かれますか?」
「行く。最近会ってないからな」
「旅に出ていらっしゃいましたからね。ラシェット様もお喜びになるでしょう。あの方は何かと力になってくださいます」
「ありがたいことだ。今後フィーと暮らすことになった時に、助けてもらうことがあるかもしれない」

 赤く染まった空を映す湖を眺めながら、俺は目を細めた。
 ここはフィーを連れてきた俺の母親の故郷にある湖だ。王城に戻っていらぬ詮索を受けるのが面倒で逃げてきた。
 馬が充分に水を飲んだことを確認すると、俺とゼノは母親の兄が住む城へと向かった。



「リアム!久しぶりだな。いきなりの訪問で驚いたぞ」
「伯父上、突然訪ねてきて申しわけない。体調を崩したりしてないか?」
「心配には及ばん。俺はまだまだ元気だ」
「ならよかった」

 突然訪ねたというのに、伯父上は笑顔で歓迎してくれた。まあ伯父上は喜んでくれるとわかっていて訪ねたのだが。伯父上には子供がなく、俺を実の息子のように可愛がってくれているのだ。
 ゼノが伯父上の前に出て、丁寧に急な訪問の非礼を詫びている。
 伯父上は「構わん」と笑って、俺とゼノの荷物を部屋に運ぶように使用人に指示した。
 使用人と共に去っていったゼノを見やりながら、伯父上が頷いている。

「ゼノはよくできた人物だ。頼もしいな。おまえの傍にいてくれて安心だ」
「え?そうか?あいつ俺には遠慮がないんだけど」
「いいじゃないか。それだけ信頼し合ってるということだろう。それにしてもどうしたのだ?急に訪ねてくるなんて。俺に会いたくなったのか?」
「まあそんなところだ」

 伯父上に案内されて、この城に用意されている俺の部屋に向かいながら話す。ラシェット伯父上は、王城に住む者達とは違って裏がないから話しやすい。

「それとも、何かあったのかな?俺には何でも話してくれ。おまえの為なら力になるぞ」
「伯父上…」

 伯父上は俺の母親と顔立ちが似ている。だから俺と伯父上も似ている。それに優しくて頼りになる。だから俺は、父王よりも伯父上を信頼している。昔から何かあれば、いつも伯父上に相談をしていた。
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