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トラビスが戻って来てから十数日が過ぎたある日、いつものようにフィル様の部屋でフィル様の無事を願っていると、廊下を慌ただしく移動する足音が聞こえた。
何事かと部屋を出て鍵をかけ、足音が去っていった方角へと向かう。しかしそんなに進まないうちに足音が戻ってきて、かなり向こう側から「いた!」と声がした。
慌ただしく廊下を移動していたのはトラビスだった。
トラビスは俺の前まで走って来た。そして「どこに行ってたんだっ」と怒鳴った。
フィル様の部屋で癒されて凪いでいた気持ちが、うるさい足音で気が散らされ更に怒鳴られて、一気に最悪な気分になった。
俺はトラビスを睨んで冷たく言い放つ。
「うるさい。俺がどこにいようと勝手だろう。おまえこそ、そんなに慌てて見苦しいぞ」
「慌てるに決まってるだろう!先ほど、王がご逝去された。至急におまえを呼べと大宰相に言われたんだよっ」
「…なに?病気だとは聞いてなかったぞ。暗殺か?」
クルリと反転して俺の前を大股で歩くトラビスの背に向かって聞く。
トラビスは少しだけ速度を落としてこちらを見た。
「俺も詳しくは知らないが…フィル様が城を出られてから身体が弱っておられたらしい」
「ふん」
何だそれは。それでは呪われていたのは王みたいではないか。フィル様を追い出したり殺そうとしたから、罰が当たったのではないのか?
王がご逝去されて、これから大変なことになるとは思ったが、悲しいとは思えなかった。
「トラビス、フェリ様のご様子は?」
「大層悲しまれている。それに体調もよくなくて寝込んでいる」
「なぜ?そのように弱くてどうする。すぐにでも王の後を継がねばならないのに」
「おまえ…主にその態度はどうかと思うぞ?…どうやら少し前から病が再発してたらしい。フェリ様もフィル様がいなくなってから、徐々に弱っていたそうだ」
俺といる時は元気に見えたけど、隠していたのか?
話を聞いていると、フィル様が二人のことを守っていたように感じる。そのフィル様がいなくなり、二人は体調を崩した。
フィル様は本当に呪われた子なのだろうか?
二人はフィル様の加護を受けていたのではないのか?もしくは…フィル様が本当に呪われた子だったために、二人に災いが降りかかったのか。
王族には謎がある。血縁ではない俺には計り知ることができない。
こうなったからには早くフィル様に戻っていただきたい。王がいなくなったのだから、もう城を出る必要はないのだ。それに新王となるフェリ様は、フィル様を大切な弟だと思っている。
今度こそ城を出てフィル様を捜しに行こうと決めたが、この後に面倒な役目を押しつけられてしまった。
何事かと部屋を出て鍵をかけ、足音が去っていった方角へと向かう。しかしそんなに進まないうちに足音が戻ってきて、かなり向こう側から「いた!」と声がした。
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フィル様の部屋で癒されて凪いでいた気持ちが、うるさい足音で気が散らされ更に怒鳴られて、一気に最悪な気分になった。
俺はトラビスを睨んで冷たく言い放つ。
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こうなったからには早くフィル様に戻っていただきたい。王がいなくなったのだから、もう城を出る必要はないのだ。それに新王となるフェリ様は、フィル様を大切な弟だと思っている。
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