銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 翌朝、早くに起きて身なりを整えて待っていると、ラズールが迎えに来た。
 ラズールと共に姉上の部屋に行く。ラズールに促されるままに部屋に入ると、大宰相と三人の大臣達、トラビスが待っていた。
 大宰相と三人の大臣達は、この城で僕の存在を知る者だ。僕が姉上の身代わりをしていたことを知っている。
 大宰相が一歩前に出て、僕に頭を下げる。

「フィル様、よくぞ戻ってくださいました。感謝しております」
「感謝はいらない。姉上のために戻ったんだ。姉上の容態は?」
「かなり弱っておられます」

 僕は広い部屋の真ん中にある大きなベッドに近づく。大きなベッドの中で、姉上の身体がとても小さく見える。

「姉上…フィルです」

 ベッドの端に手を置いて声をかけてみるけど、姉上は早い呼吸を繰り返すだけで、目を閉じてこちらを見ない。
 ラズールが僕の後ろに立って静かに言う。

「薬が効いて眠っておられます」
「そう…」

 僕とラズールがベッドの横に立ち、大宰相と三人の大臣達がベッドの足元に立っている。
 トラビスは、扉の前で外の様子を気にしている。
 ラズールは僕以外の人を警戒しているらしく、ピリピリとして怖い。
 今からおまえが僕を殺すのに、どうして他の人を警戒してるのと可笑しくなった。
 僕はラズールの袖を引くと、小さく首を振って微笑んだ。

「そんなに警戒しなくてもいい」
「しかし」

 ラズールの言葉を遮って、大宰相が口を開く。

「フェリ様を助けられるのはフィル様しかいないのです。女王がいなくなれば、この国は滅んでしまいます。どうかフェリ様をお助けください」
「わかってるよ。大宰相、おまえは僕がどうすれば姉上を助けることができるのか、知ってるみたいだね」
「伝え聞いただけですが。実際にこのような状況になることは初めてですので」

 大宰相が大きく息を吐いて身体を揺らした。その時にカチャンという音を聞いた。
 ああそうか。大宰相も三人の大臣達も、シャツの上に丈の長い上着を着ている。その上着の中に、剣を隠し持っているのか。
 僕を殺す役目はラズールだと決まっているけど、もしラズールが迷ったら、この四人の誰かが僕を殺すのだろう。もしくは外を見張っているトラビスか。
 でも余計なことはしないで欲しい。ラズールが迷ったら、僕は自分で胸を刺すよ。せめて死に方は選ばせて。
 僕はベッドの端から身を乗り出して姉上を呼ぶ。三度目に呼んだ時に、姉上がゆっくりと目を開けた。


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