銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 頭の上から規則正しい寝息が聞こえてきて、僕はそっと顔を上げた。長いまつ毛の下の隈に指で触れながら、ふふっと笑う。

「ずっと寝てなかったから疲れたよね…おやすみなさい」

 僕はリアムの唇にキスをすると、ゆっくりと身体を起こしてベッドから降りた。降りた時に少しだけ下半身に痛みを感じて、動きを止める。でもすぐにベッドから離れて、棚の上に置いてある新しいシャツとズボンに着替えた。
 リアムに激しく突かれて腰が痛い。腹の奥も変な感じがする。でもこれは幸せな痛みだ。リアムが吐き出したモノは、情事が終わってすぐに掻き出されてしまったけど、きっと少しは僕の中に溶け込んでいる。それは僕がリアムの物だという証だ。
 着替え終わり、剣をベルトに差してマントを羽織る。そしてもう一度リアムの傍に行き、顔を寄せて見つめる。 
 リアムは二日間、僕を看病して寝ていなかった。その上で僕を抱いたから、すごく疲れたに違いない。だからしばらくは起きないだろう。
 僕は端正な顔を見つめて静かに話しかける。

「リアム…僕はイヴァル帝国に帰るよ。姉上が心配なんだ。それに呪われた子の印の痣が現れたのだから、もう知らないでは済まされない。リアムの妻になりたかったけど…ごめんね。少しの間だけど、一緒にいれて幸せだった。僕を愛してくれてありがとう。僕も愛してるよ…」

 涙が溢れてリアムの顔がぼやけて見えない。
 僕は袖で顔を拭うと、リアムの顔を瞳に焼き付けた。そして枕元に小さな袋を置くと、静かに離れた。


 扉と反対側の大きな窓に近寄り、そっと外を覗く。誰もいないことを確認すると、音を立てないように窓を開けて外に出た。
 リアムの部屋は、城の端にある。そして人払いをしているのか、兵はおろか、使用人すら姿を見かけない。この城でのリアムの複雑な環境のせいなのだろうか?ここを出て行く僕には、その理由はわからないままだ。
 日が少し落ちてきて、外は寒い。手袋は嵌めてきたけど首に巻くショールを忘れてしまった。とても大切な物なのに…とマントのフードを引っぱりながら歩く。
 ここに来てからは、ずっとリアムの部屋にこもっていたから、どこに何があるのか、城の作りが全くわからない。ロロを探したいけど厩舎がわからないし、トラビスもどこの部屋にいるのかわからない。まさかもう帰ったのだろうか。
 人の気配がする度に物陰に隠れてやり過ごし、少しずつ進んで行く。ゼノを紹介された門まで行こうとしたけど、迷ってしまった。見覚えのない場所に来てしまって途方に暮れていると、いきなり背後から肩を叩かれた。
 僕は咄嗟に剣の柄を掴んで振り向いた。そして目を見開いて動きを止める。
 僕の真後ろに、イヴァル帝国の濃い青色の軍服を着たトラビスがいた。トラビスは、僕の顔を見て安堵したような表情をした。
 
 
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