銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 ヒソヒソと話す声が聞こえて、僕は目を覚ました。しばらく状況がわからなくてぼんやりとする。だんだんと意識がはっきりとしてきて、ようやく僕はベッドに寝かされていることに気づいた。
 横を向くと、扉の前でリアムとゼノが顔を寄せて真剣な様子で話している。反対側の窓の外を見ると、太陽が高い位置にあり、今は昼頃なのだとわかる。
 午後からリアムの父上の、バイロン国王に会う予定だったけど…どうなったのかな。
 そのことをリアムに聞くために起き上がろう頭を上げて、僕は動きを止めた。リアムの口から、驚く言葉を聞いたから。

「ゼノ、まずい状況だ。詳しく話を聞こうと、先ほどイヴァルの使者に会いに行ったのだが…」
「は…どうかされましたか?」
「あいつ…一番偉そうにしてた奴。フィーを殺そうと刺した奴だ。俺の顔を見られている」
「それは…。では、フィル様がここにいることが知られたのですか?」
「たぶんな。あいつが俺とフィーが一緒にいると思っているなら。まあ何か聞かれたら、フィーとはすぐに別れたと話すつもりだ」
「そうですね。フィル様の安全のために、しばらくはフィル様のことは伏せておいた方がよろしいかと。では王へのご面会はどうされますか?」
「そうだな。イヴァルの使者が帰るまで延ばそうと思う」
「かしこまりました」

 僕はリアムから背中を向けてシーツを握りしめた。
 うそ…トラビスが来てる?高官のトラビスがわざわざ?きっとリアムの正体に気づいてたんだ。だから自ら使者として王城に来た。そしてリアムと会ったということは、僕がここにいることも確信している。そうなればもう、僕の成すべきことは決まっている。僕は僕の運命を受け入れる。ただ…その前に、叶えたい願いがある。

「フィー、起きたのか?」

 頭の上から聞こえた声に、僕は顔を動かした。
 いつの間にかゼノがいなくなっており、リアムが僕の顔を覗き込んでいる。
 僕は頷くと、何とか口角を上げた。

「うん…もう大丈夫。ごめんね…心配かけて。王様に会う時間、過ぎちゃった?」
「それだが、しばらくは延期だ。おまえの体調が心配だからな。今はゆっくりと休んでろ」
「でも…」
「焦らなくても時間はたっぷりとあるんだ。フィー、何か食べたい物はあるか?して欲しいことはあるか?なんでも聞いてやるぞ」

 リアムが僕の髪を撫でて、優しく笑う。
 僕は少しの間、無言で紫の瞳を見つめると、「リアム」と両手を広げた。

「ん?どうした?」
「僕を抱きしめて」
「なんだ、急に甘えたになって」
「だめ?」
「ダメじゃない」

 リアムがブーツを脱いで僕の隣で横になる。そして僕を抱き寄せて額にキスをする。

「それで?次は?」
「…本当に…なんでも聞いてくれる?」
「ああ」

 僕はリアムの胸に顔を伏せたまま、くぐもった声で話し続ける。

「僕、リアムの父上に早く挨拶をしたかった。僕を認めてもらって、早くリアムの妻になりたかった。でも僕の体調を考えて、延ばしてくれたってわかってる。だけど…僕は早く…リアムのものになりたい。もう待てないよ。だからね…リアム、僕を抱いて。今、ここで。お願い…」
「でもおまえ、体調が…」
「大丈夫だよ。たくさん寝たし、薬も飲んだし。母上のことも悲しいけど、ちゃんと受け入れてる。だから大丈夫…」

 まずい。声が震える。
 僕は唇を噛んで、零れそうになる涙をこらえた。
 リアムの唇が僕の耳朶に触れる。そして掠れた声で「わかった」と囁いた。

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