銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

文字の大きさ
上 下
54 / 451

18

しおりを挟む
 リアムが服を脱いで先に入る。その後に僕ものろのろと服を脱いだ。そして前を隠して風呂場に入る。
 すでに身体を洗い始めていたリアムが、「おいで」と僕に手を差し出す。
 恐る恐る伸ばした手を掴まれて、あっという間に抱き寄せられた。

「本当だ。細いのに薄く筋肉がある。おまえの肌はすべすべして手触りがいいな」
「やっ…ちょっ…と!くすぐったいからっ」
「仕方ないだろ。触りたくなる肌をしているフィーが悪い」
「なにそれっ…あんっ」

 僕の背中を撫でていた手が下に降りる。尻を撫でられて思わず変な声が出た。

「ばかっ…僕、身体を洗いたいのに…」

 ぐすんと鼻声で呟くと、リアムが慌てて身体を離して「悪いっ」と謝る。そして甲斐甲斐しく僕の全身を洗ってくれた。
 自身の身体に残っていた泡も洗い流して僕の手を掴む。

「ほら、風邪ひくから早く拭こう」
「うん…あっ」

 僕の手を引いて鏡のある部屋に戻り、カゴに用意されていた布で拭いてくれようとするのを慌てて止める。

「じっ、自分で拭くから。リアムも早く拭かなきゃ風邪ひいちゃうよ」
「なんだ、俺が拭いてやりたかったのに」
「…次の時に。だって時間はたっぷりとあるでしょ?」
「そうだな」

 僕の頭に布を被せてリアムが笑う。
 僕も笑い返して身体を拭こうとしたその時、また胸にあの刺すような痛みが走った。

「あっ…痛いっ!」
「どうしたっ?」

 なにこれ?今までの比じゃないくらいにすごく痛い!鋭利な刃物を何本も突き立てられているみたいだ。
 僕は我慢できずに胸を押さえて膝をついた。
 リアムも屈んで僕の背中を撫でる。

「あっ…!いっ…」
「フィー!どこが痛いっ?」

 全身から変な汗が噴き出してくる。手足の先が冷えて氷のようだ。ああ…ごめんねリアム。リアムにこのことを相談しようと思ってたのに遅かった。こんなに一気にひどくなるなんて思わなかった。
 青い顔をして覗き込んできたリアムの顔が涙でぼやける。そして再び襲ってきた強い痛みと共に、僕の身に驚くべきことが起きた。

「えっ…なにこれ…」

 胸を押えていた掌に熱を感じて、慌てて離して下を向く。押さえていた左胸の真っ白な肌に、黒い点が現れた。その点から黒いスジが伸びて、絵を描くように四方八方に広がっていく。そして左胸と左腕に、蔦のような模様ができた。

「なんだこれは!どういうことだ?取れないぞっ」

 リアムが僕の胸の模様を布で強くこする。

「痛い…」
「まだ痛むのかっ?大丈夫か!」
「違う…」
「え?」

 違う。模様が現れた途端に刺すような痛みは消えた。きれいに消えた。今はただ強くこすられて痛かっただけだ。
 僕は自分の身体を抱きしめて震え出した。
 待って…。これは…こんなことって。どうして…今になって…。あれは…本当だったんだ。
 僕はすっかり忘れていたある光景を思い出した。



 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

処理中です...