銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「見えてきた。あれがバイロン国の王都だ」
「わあ…大きい…」

 リアムの声に顔を前に向ける。遠くに横一帯に広がる高い塀と大きな門が見える。門の前には長蛇の列ができて、大勢の人でとても賑やかそうだ。
 イヴァル帝国の王都も大きくて人が多い。だけどこれほどの賑やかさはない。国民性の違いだろうか。イヴァルは堅苦しい人が多いけど、バイロンは明るい人が多い印象だ。
 僕が前を向いてそんなことを考えていると、リアムが馬の速度を落とした。
 僕も手綱を引いてロロの足を緩める。

「どうしたの?」
「俺達は高官専用の門から入るぞ。あの人混みの中を進んで俺だとバレたくないからな」
「あ、そうか。リアムが人気で囲まれてしまうから…」
「違うな。俺は人気もあるが嫌われてもいる」
「リアムが?まさか…」
「まあ…いろいろと問題があるんだ。だからフィー、俺が絶対に守るが油断するな。俺から離れるな」
「うん…」

 リアムが手を伸ばして僕の頬を撫でる。
 僕は首をすくめて笑う。
 少し浮かない表情をしていたように見えたリアムだったが、僕を見て明るく笑った。
 リアムは明るい髪色と同じで、笑顔がよく似合う。その笑顔を見るたびに、僕の胸がキュッと苦しくなる。人を好きになると苦しくなるなんて知らなかった。
 僕はリアムにたくさんの感情を教えてもらった。だけど僕はリアムに何かをしてあげられるだろうか。
 フードを引っ張って深く顔を隠し、再び速度を上げたリアムの後に続いた。
 門の前の行列から離れた場所を迂回しながら、フードの陰から並んだ人々に目を向ける。
 この国の地方からやって来た商人や旅人達だろうか。黄色や茶色、黒や赤みがかった髪の人達で、金や銀の髪の人は見当たらない。特に銀髪は見慣れなくて珍しいかもしれない。だから城に着くまでは絶対に見られないようにしなければと、僕は更に深くフードをかぶる。
 そして視線を前に戻して小さく息を吐いた。
 母上も姉上も僕と同じ銀髪だ。イヴァルで輝くような銀髪は三人だけだ。母上の遠縁だという人を城で見かけたことがあるけど、灰色に近いくすんだ銀髪で綺麗ではなかった。
 幼い頃からラズールがよく僕の銀髪を褒めてくれた。嬉しかった。それに僕は自分のことが好きではないけど、この髪だけは好きだ。愛されなかったけど、僕と母上、姉上が家族だという印だから。
 母上と姉上は今頃どうしてるのだろう。きっと母上は、逃げた僕を許せずに怒っている。姉上は優しいから心配してくれてるかな…。それにお気に入りのラズールが傍にいるから、幸せでいてくれるといいな。
 ふいにリアムの姿がにじんだ。
 僕は慌てて袖で目を拭い鼻をすする。
 ちょうどその時、リアムが振り返って「あれだ!」と大きな声を出した。
 リアムが指さした先に、先程の半分ほどの大きさの門があった。
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