銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「おいっ」
「ん…」

 僕はいつもリアムにされるがままでよくわからない。だから勢いよく押しつけたけど、カチンと歯が当たって慌てて離れた。

「ごっ、ごめっ…大丈夫…?」
「俺は大丈夫だ。おまえの唇が切れてるぞ」
「え?」

 手袋を脱いで指で唇を触る。白い指先に小さく血がついている。

「…僕、キスも上手くできない」

 項垂れた僕の顎を持ち上げて、リアムが僕の唇を舐める。そして嬉しそうに笑った。

「俺は嬉しかった!フィーからしてくれたの、初めてだからな!」
「そう…だった?」
「そうだ。これからもして欲しい。いつでもどこでもして欲しい」
「うん…」
「では行くか。このまま進むか?」
「ううん、ロロに戻るよ」
「わかった」

 リアムに支えてもらいながらロロの背中に戻り、リアムの後ろをついて行く。
 馬が軽やかに走り出した振動で、リアムのフードが脱げて金髪があらわになる。金色の髪が朝の光の中でキラキラと輝いて眩しい。
 僕はその眩しさにたまらず目を細めて思う。
 リアムは僕とは対極にいる人だ。見た目も性格も育った環境も。何もかもが全く違う。だから僕は傍にいてとても楽しい。憧れて止まない。 
 でもリアムはどうなの?どう思ってる?僕といて暗い気持ちにならない?呪われた子の僕といて気持ち悪くないの?
 最近は少しずつ自信がついてきたとは言っても、長年呪われたいらない子だとされてきた僕の心は、すぐに暗く落ちてしまう。
 でも今は、リアムが僕を求めてくれる。城に連れ帰って妻にすると言ってくれる。好きだと言ってくれる。
 この先、やっぱり呪われた子の僕はいらないと言われる時が来るかもしれない。嫌いだと言われるかもしれない。言われたら僕はどうなるだろう。自分でもわからない。その時を考えると怖い。だけどまだ言われてない。
 リアムが傍にいて幸せなのに嫌なことを考えて落ち込むなんて、僕はだめだな。未来のことはわからないけど、今はリアムを信じてついて行こう。
 リアムの背中を見て、その先の道を見る。そして手綱を握り直したその時、また胸を刺すような痛みを感じた。

「いっ…!」
「どうした?」
「なんでもないよ…」
「そう?」

 僕は笑顔で答える。だけど吐く息は白く顔に当たる風は冷たいのに、痛みで背中に汗が流れる。
 僕はリアムに気づかれないように前かがみになると、胸を押さえて深呼吸を繰り返した。

 
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