銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 僕の頬に触れる温かい手の上に僕の手を重ねる。リアムの顔がまるで子供のように拗ねてるから、僕はおかしくて吹き出した。

「ふふっ、なんて顔してるの」
「…面白くない」
「ラズールのこと?」
「またその名を口にした」
「ごめんね?」

 僕が謝ると今度は眉尻を下げて困った顔をする。そして僕の頭を抱き寄せる。

「リアム?」
「俺の方こそごめん。フィーを突き放すような態度を取ったくせに他の奴の名を聞いて怒って…勝手だよな」
「ううん…嬉しい。国では僕のことを気にかけてくれる人なんて、ラズール以外いなかったから…。僕のことでそんな風にしてくれるの、嬉しい」

 僕も遠慮がちにリアムの背中に腕を伸ばす。
 するとリアムが「もっとくっつけよ」と言って、僕の頭にキスをした。
 僕は頷いて腕に力を込める。リアムと身体が密着して体温が心地いい。

「眠いのか?」
「…こうしてると気持ちいい。安心する。僕、リアムにこうされるの、好き」
「フィー…おまえは色々と気をつけないと危ないぞ」
「なんのこと?」

 少しだけ顔を離して見上げると、リアムが更に困った顔をしていた。
 僕よりも大きな指で目の下を撫でられて、たまらず目を細める。僕の好きな紫の瞳が近づき鼻先にキスをされる。

「ん…」
「フィーはまだ、俺のことを好きかわからないだろ?なら不用心なことを言ったらダメだ。俺に襲われるぞ」

 ふっ…と笑ったリアムの息が、僕の頬に当たる。それがこそばゆくて僕は肩を竦めて笑った。

「ふふっ、くすぐったい。大丈夫だよ。リアムは僕の気持ちを無視して襲ったりなんかしない」
「おまえな…」
「それにね、幸せな気持ちがどういうものかわからなかったけど、今こうしてリアムの腕の中にいるの、胸の中が温かくて気持ちいいんだ。これが幸せってことなのかな?」
「…俺はフィーが好きだ。だから触れたくて抱きしめてしまう。だが少しでも嫌だと感じたら突き飛ばしてくれていいんだぞ?」
「少しも嫌じゃないよ?」
「うっ…、俺は試されてるのか?」
「なにが?」

 リアムが困った顔から凛々しい顔つきになって、僕の頬を両手で包んで見つめてくる。
 あまりにも真剣に見つめられて、僕は恥ずかしくなり俯こうとする。でもリアムの両手がそれを許してくれない。

「はあ…おまえは本当に不用心すぎる。なあフィー、これは嫌か?」
「え…」

 リアムの顔が近づき、僕の額と頬にキスをする。
 ちっとも嫌な感じはなくて、むしろ触れる唇が柔らかくて気持ちがいい。そのことを素直に口にする。

「嫌じゃないよ…。リアムの唇は柔らかいね」
「はあ…ほんとに…」
「ん?」

 リアムが俯いて何か呟いている。でもすぐに顔を上げて、今度は僕の唇にキスをした。


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