36 / 451
36
しおりを挟む
「フィー、俺は決しておまえの傍を離れない。刺客からも魔物からも守ってやる。だからそんな顔をするな」
「リアム…」
僕は顔を上げて、頭を撫でるリアムの腕を掴んで微笑もうとした。だけど上手く笑えなかった。
なのになぜか、リアムが甘い顔をして僕を抱きしめてくる。
あ…そうか。僕を慰めようとしてくれてるのかな。ふふ、リアムの体温と匂い…好きだな。
僕もリアムの背中に手を回して硬い胸に頬をすり寄せた。
「大丈夫だよ…。リアムがいてくれるから今は寂しくない…」
「それならいい。…というか、あのな、俺はフィーの笑った顔がたまらなく可愛いと思う。…が、あまり他の者の前では笑わないでくれ」
「え…僕、笑い慣れてなくて…やっぱり変かな…」
「違うぞ!単に見せたくない…というか、フィーの笑顔は俺だけのものというか…」
僕は上目遣いに紫の瞳を見て小さく首を傾ける。
「よく…わからない。けど僕が笑うとしたら、リアムの前だけだよ?あ、ノアの前でも笑うかな?」
「なに?あの少年…やはり許せん…」
「リアム」
「なんだ?」
またもやぶつぶつと呟き始めたリアムのマントを掴んで小さく引っ張る。
ようやくリアムと目が合うと、僕は身体を離してもう一度確認をする。
「リアム、本当に僕が傍にいてもいいの?呪われてる僕が気持ち悪くない?」
リアムは僕の両手を握りしめると、正面から目を見つめてはっきりと言った。
「傍にいて欲しい。気持ち悪いなどと微塵も思わない。だからフィー、おまえも自分のことをそんな風に言うな」
「…うん、わかった」
頷いた僕を見て、リアムが笑いながら僕の頬を撫でた。そして僕の脇に手を入れて立ち上がると、僕と自身の服についた草を手で払う。
「ありがとう」
「ああ。ではデネス大国に向かうか」
「うん。またよろしくね、リアム」
「俺の方こそよろしく頼む」
「うんっ」
僕は笑って返事をする。今度はちゃんと笑えたようだ。
だってリアムが、美しい紫の瞳を細めて優しく見てくるから。
ロロに乗るのを手伝ってくれたリアムの、離れていく手を掴んで僕も見つめ返す。美しい紫の瞳から目が離せない。
「どうした?一緒に乗るか?」
「ううん、そうじゃなくて…。ずっと思ってたんだけど、僕…リアムの目が好きだよ。とても綺麗だと初めて会った時から思ってたんだ」
「目だけかよ…」
「え?」
「んっ…いやっ、俺もおまえの緑の目が美しいと思っているぞ。その髪も顔も肌も、全てが美しい。全てが好きだ」
「…あ、うん…ありがとう。そんなに褒められたことないから…恥ずかしいよ」
「あのな、こんなことを言うのは失礼かもしれんが、イヴァル帝国の王城にいる者は、みな目が悪いのか?よく天使のようなフィーを放り出せたものだな。まあそのおかげで俺はフィーと出会えたから感謝しているが」
リアムが僕の手の甲を撫でて離れ、自分の馬に乗る。
僕はリアムを見つめながら、ちゃんと思っていることは口に出さなきゃと息を吸う。
「リアム」
「ん?どうした?」
手綱を掴んだリアムがこちらを見る。
僕も手綱を握りしめて、一息に言葉を吐き出した。
「僕っ、イヴァルで過ごした日々は辛かったけど、呪われた子として追い出されてよかったって思ってる…っ。だってリアムと出会えたからっ!…あのっ、ちゃんと僕の気持ちを伝えたくて…そのっ」
「フィー、ありがとう!」
リアムがすぐ傍にきて眩しく笑う。
ああ…本当になんて眩しいのだろう。この笑顔を見ていると、僕の心の中が温かくなる。
「やはり俺たちの出会いは運命だな!」
笑顔でそう言うと、リアムはデネス大国に向けて進み出した。
「リアム…」
僕は顔を上げて、頭を撫でるリアムの腕を掴んで微笑もうとした。だけど上手く笑えなかった。
なのになぜか、リアムが甘い顔をして僕を抱きしめてくる。
あ…そうか。僕を慰めようとしてくれてるのかな。ふふ、リアムの体温と匂い…好きだな。
僕もリアムの背中に手を回して硬い胸に頬をすり寄せた。
「大丈夫だよ…。リアムがいてくれるから今は寂しくない…」
「それならいい。…というか、あのな、俺はフィーの笑った顔がたまらなく可愛いと思う。…が、あまり他の者の前では笑わないでくれ」
「え…僕、笑い慣れてなくて…やっぱり変かな…」
「違うぞ!単に見せたくない…というか、フィーの笑顔は俺だけのものというか…」
僕は上目遣いに紫の瞳を見て小さく首を傾ける。
「よく…わからない。けど僕が笑うとしたら、リアムの前だけだよ?あ、ノアの前でも笑うかな?」
「なに?あの少年…やはり許せん…」
「リアム」
「なんだ?」
またもやぶつぶつと呟き始めたリアムのマントを掴んで小さく引っ張る。
ようやくリアムと目が合うと、僕は身体を離してもう一度確認をする。
「リアム、本当に僕が傍にいてもいいの?呪われてる僕が気持ち悪くない?」
リアムは僕の両手を握りしめると、正面から目を見つめてはっきりと言った。
「傍にいて欲しい。気持ち悪いなどと微塵も思わない。だからフィー、おまえも自分のことをそんな風に言うな」
「…うん、わかった」
頷いた僕を見て、リアムが笑いながら僕の頬を撫でた。そして僕の脇に手を入れて立ち上がると、僕と自身の服についた草を手で払う。
「ありがとう」
「ああ。ではデネス大国に向かうか」
「うん。またよろしくね、リアム」
「俺の方こそよろしく頼む」
「うんっ」
僕は笑って返事をする。今度はちゃんと笑えたようだ。
だってリアムが、美しい紫の瞳を細めて優しく見てくるから。
ロロに乗るのを手伝ってくれたリアムの、離れていく手を掴んで僕も見つめ返す。美しい紫の瞳から目が離せない。
「どうした?一緒に乗るか?」
「ううん、そうじゃなくて…。ずっと思ってたんだけど、僕…リアムの目が好きだよ。とても綺麗だと初めて会った時から思ってたんだ」
「目だけかよ…」
「え?」
「んっ…いやっ、俺もおまえの緑の目が美しいと思っているぞ。その髪も顔も肌も、全てが美しい。全てが好きだ」
「…あ、うん…ありがとう。そんなに褒められたことないから…恥ずかしいよ」
「あのな、こんなことを言うのは失礼かもしれんが、イヴァル帝国の王城にいる者は、みな目が悪いのか?よく天使のようなフィーを放り出せたものだな。まあそのおかげで俺はフィーと出会えたから感謝しているが」
リアムが僕の手の甲を撫でて離れ、自分の馬に乗る。
僕はリアムを見つめながら、ちゃんと思っていることは口に出さなきゃと息を吸う。
「リアム」
「ん?どうした?」
手綱を掴んだリアムがこちらを見る。
僕も手綱を握りしめて、一息に言葉を吐き出した。
「僕っ、イヴァルで過ごした日々は辛かったけど、呪われた子として追い出されてよかったって思ってる…っ。だってリアムと出会えたからっ!…あのっ、ちゃんと僕の気持ちを伝えたくて…そのっ」
「フィー、ありがとう!」
リアムがすぐ傍にきて眩しく笑う。
ああ…本当になんて眩しいのだろう。この笑顔を見ていると、僕の心の中が温かくなる。
「やはり俺たちの出会いは運命だな!」
笑顔でそう言うと、リアムはデネス大国に向けて進み出した。
11
お気に入りに追加
506
あなたにおすすめの小説
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
左遷先は、後宮でした。
猫宮乾
BL
外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
目が覚めたら異世界で魔法使いだった。
いみじき
BL
ごく平凡な高校球児だったはずが、目がさめると異世界で銀髪碧眼の魔法使いになっていた。おまけに邪神を名乗る美青年ミクラエヴァに「主」と呼ばれ、恋人だったと迫られるが、何も覚えていない。果たして自分は何者なのか。
《書き下ろしつき同人誌販売中》

愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる