銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 僕はノアから手を離して肩にかけた鞄と剣を床に降ろした。そしてリアムの正面に立つと頭を下げた。

「なんの真似だ」

 低い声に心臓が跳ねる。もう僕に甘く優しく接してくれたリアムはいない。でも僕を助けてくれた。きっと一度でも関わった者を捨て置けない性格なのだろう。だからこれ以上ここにいたらリアムを困らせる。早くここから離れるんだ。
 僕はゆっくりと頭を上げて固く手を握りしめた。

「ありがとう。リアムが来てくれなかったら確実に死んでた。僕はまた生き延びることができたから、やりたいことをする。行ってみたい所があるんだ。今からそこに行くつもりで、リアムに挨拶をしようとリアムの部屋を探してたんだ」
「どこ…に行く?それになぜそんなに急ぐ?まだ全回復はしていないだろう?」

 リアムの声が更に低くなった気がする。
 リアムはどうして僕を止めるの?ほら、そんなに怖い顔をしてるじゃないか。僕が傍にいるの、嫌なんでしょ。だから止めないでよ。
 僕は小さく息を吐くと、床に置いた剣と鞄を持った。鞄を肩にかけ剣を腰のベルトに差す。そしてなるべく平静を装って口を開く。

「僕の国からは、僕が死ぬまで追手が来ると思う。トラビスは一旦引いたけど、また彼か新たな追手が来ると思う。だから捕まる前に早く望みを叶えたい」
「追手って…。フィーは何をしたんだ?」
「何もしてないよ…。いや、したのかな。僕は生まれて生き延びた。だから狙われる」
「なんだそれは!」

 リアムが厳しい声を出す。
 ノアも僕の為に怒っている。
 僕の国の理不尽な慣習は、理解されないだろう。いや…もしかすると、バイロン国でも同じなのだろうか?
 僕はリアムに向かって首を微かに傾ける。

「リアム、聞きたいことがある。もしこの国で王族に双子が生まれた場合、どうなるの?」
「どうなるって何がだ?盛大に祝うだけだが」
「…ああ…うん…」

 そうか…そうなのか。いいな、羨ましい。僕はバイロン国に生まれたかった。そうしたら呪われた子ではなくて幸せになれたかもしれない。
 僕は震える息を吐き出して微笑む。

「変なことを聞いてごめん。じゃあ僕は行くね。リアムもノアもありがとう。お世話になりました。二人とも末永く元気で…」

 そう言って階段を降りようと足を踏み出した僕の腕が強く引かれた。
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