銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 結局はまたベッドに戻され、今度こそ起き上がることを禁じられた。何度も倒れそうになったのだから仕方がない。
 僕は仰向けになり大きく息を吐いて目を閉じる。するといきなり首に冷たい物が触れて肩が跳ねた。目を開けるとリアムがベッドの端に座り僕の首に手を当てている。

「ひっ…」
「あ、悪い。顔が赤いから…。おまえ熱があるじゃないか。医師め…もう大丈夫だと言っておきながらどういうことだ?」
「ちが…ごめん。僕が動いたりしたから…。あの人を怒らないで…」
「…なあ、医師が話してたんだが、毒に耐性があるんだって?」

 首に触れていたリアムの手が僕の頬に移動する。冷たい手が火照った頬にとても気持ちがいい。
 僕は熱い息を吐き出して目を細める。

「うん…子供の頃にね…食事に毒を盛られたり、毒矢で狙われたりしたから…」
「なんだとっ?なぜそんな目に……いや、いい」

 今度はリアムが視線を逸らした。
 僕は汗ばむ額を手の甲で拭ってまた息を吐く。

「ふぅ……楽しい話じゃないから…聞かないで。それに回復したら…すぐに出て行くから」
「えっ?」
「だって…僕が、リアムの傍にいる必要…ない…」
「そうだな…」

 視線を戻したリアムの顔が苦しそうだ。
 なぜそんな顔をしてるの。苦しいのは僕の方なのに。
 僕は頬に添えられたリアムの手を掴むと、そっと離して反対側を向いた。
 リアムはしばらく動かなかったが「薬をもらってくる」と言ってベッドから離れた。離れる際にリアムの手が僕の銀髪に触れたような気がした。


 薬を持って来たのは医師だった。今度の薬は赤い色をしていて、僕はまた顔に不安な気持ちを出していたらしい。
 医師が「これは甘いから飲みやすいですよ」と笑った。
 薬はよく効いて、少し微睡んでいる間に熱が下がり頭の中がすっきりとした。目覚めてトイレに行こうと起き上がっても目眩がしなかった。
 でも動いてまた倒れたら余計に迷惑をかけてしまう。だから朝まで大人しく寝ていた。そして外が明るくなり始めた頃に起きて、棚の中のシャツと黒のズボンを拝借して着替え、剣と鞄を持って部屋を出た。
 ここは僕がいた城に比べればとても小さいけど、それでもかなりの広さがある。幾つかある部屋の扉や一定の間隔で壁に取り付けられた燭台は、豪華な装飾が施されている。リアムはかなりの資産がある貴族なのだなとわかる。
 身体が辛くて聞けてなかったけど、トラビスに刺された僕をどうやって助けてくれたのか気になる。ここを出る前にリアムに礼を言い、トラビスがどうなったのかを聞こう。そして今度こそ、きちんとさよならを言おう。
 昨夜にリアムと会った場所の近くにリアムの部屋があるに違いないと廊下を右へと進む。突き当たりの角を曲がり階段の上に差し掛かった所で、下から揉めている声と階段を昇ってくる足音が聞こえてきた。

「連絡くれるの遅くないですかっ?俺はずーっと心配で眠れなかったんですよっ!」
「それは奇遇だな。俺も眠れていない」
「でもあん…リアム様はフィルの傍にいたじゃないですかっ?いつでも様子を見れたでしょうがっ!俺は会いたくても会わせてもらえなかったんですから!」
「おまえはうるさいな。フィーはまだ全快復してないのだ。騒ぐなら会わせないぞ」
「うっ…!すいません…」
「ノア…?」

 階段を曲がって現れた姿を見て僕は上から声をかけた。ノアだ。ノアを見てなぜかとても安堵した。
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