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「その顔…、ルカの弟にそっくりじゃんかっ」
「でしょ?」
大げさに驚く赤築を横目に、俺は冷静に少年を見る。
確かに、ルキ様によく似ている。パッと見では、別人だとは気付かないだろう。
だけど落ち着いて見ると、髪も瞳もこの少年は真っ黒だ。ルキ様はルカ様と似て、光が当たると青く輝く美しい髪色をしている。顔だって、ルキ様の方が整っている。
よく知る俺だからこそ区別が付くが、赤築にはわからないのかもしれない。
俺は少年を見て、ニヤリと口角を上げた。
「中々に似ているじゃないか。たけどな、おまえにはルキ様に備わっている品格がない。それにルキ様の方が、愛らしい顔をしているぞ」
「はあっ?あんたの目、腐ってんじゃないのっ?まあいいや。今からそんな口を聞けないようにしてやるから」
そう言うと、少年が俺に向かって、尖った爪を振りかざした。
振り上げられた腕を、素早く掴む。腕を掴んだ俺の手に体重をかけて、少年が、振り子のように身体を跳ねあげながら赤築に蹴りを入れた。
「うわぁっ!」
赤築が悲鳴を上げて、顔の前に出した両腕で少年の蹴りを受け止める。そこそこの威力があったようで、赤築が数歩、後ろへよろめいた。
俺は、少年を放り投げると後ろを振り返った。
「赤築、大丈夫か?」
「いってぇ!ガキのくせにやるじゃねぇかっ」
「おまえが油断し過ぎだ。こいつは敵だ。手を抜くな」
「わかってるよっ。しかしルカの弟に似てるというだけでもやり辛いのに、こんなガキに本気を出せねーしな…」
器用に足から着地していた少年が、せせら笑う。
「だーかーらぁ、僕を舐めるなって言ってんじゃん。あんた達をやるなんて、余裕だよ?」
「…やっぱ前言撤回。ルカの弟に似てやしねぇ。あの子はこんな馬鹿ヅラじゃないし、もっと可愛い。なんたってルカの弟だからなっ」
「確かに」
赤築の言葉に悔しそうにこちらを睨んでいた少年が、ふいに「今何時?」と聞いてきた。
「はあ?急に何だよ?…ちょっと待てよ。え…っと、八時前だ」
ブツブツと文句を言いながらも、赤築が腕に嵌めた時計を確認して、律儀に答える。
少年が「そろそろかな…」と言いながら、こちらに背を向けて、門の外に向かい出した。
咄嗟に俺は、少年の腕を掴む。
「おい、待て。まだルカ様の居場所を聞いていない」
「え~、もういいんじゃない?きっとその人狼だって、黒条にいる方が居心地がいいって。それに聞いたよ?すっごく綺麗な男の人なんだって?もしかしたらトウヤ様のお気に入りになってるかもね。そしたらもう、戻って来ないよ」
「は?誰だ、そいつは?」
俺は、自分でも驚く程の低く冷たい声を出した。
「でしょ?」
大げさに驚く赤築を横目に、俺は冷静に少年を見る。
確かに、ルキ様によく似ている。パッと見では、別人だとは気付かないだろう。
だけど落ち着いて見ると、髪も瞳もこの少年は真っ黒だ。ルキ様はルカ様と似て、光が当たると青く輝く美しい髪色をしている。顔だって、ルキ様の方が整っている。
よく知る俺だからこそ区別が付くが、赤築にはわからないのかもしれない。
俺は少年を見て、ニヤリと口角を上げた。
「中々に似ているじゃないか。たけどな、おまえにはルキ様に備わっている品格がない。それにルキ様の方が、愛らしい顔をしているぞ」
「はあっ?あんたの目、腐ってんじゃないのっ?まあいいや。今からそんな口を聞けないようにしてやるから」
そう言うと、少年が俺に向かって、尖った爪を振りかざした。
振り上げられた腕を、素早く掴む。腕を掴んだ俺の手に体重をかけて、少年が、振り子のように身体を跳ねあげながら赤築に蹴りを入れた。
「うわぁっ!」
赤築が悲鳴を上げて、顔の前に出した両腕で少年の蹴りを受け止める。そこそこの威力があったようで、赤築が数歩、後ろへよろめいた。
俺は、少年を放り投げると後ろを振り返った。
「赤築、大丈夫か?」
「いってぇ!ガキのくせにやるじゃねぇかっ」
「おまえが油断し過ぎだ。こいつは敵だ。手を抜くな」
「わかってるよっ。しかしルカの弟に似てるというだけでもやり辛いのに、こんなガキに本気を出せねーしな…」
器用に足から着地していた少年が、せせら笑う。
「だーかーらぁ、僕を舐めるなって言ってんじゃん。あんた達をやるなんて、余裕だよ?」
「…やっぱ前言撤回。ルカの弟に似てやしねぇ。あの子はこんな馬鹿ヅラじゃないし、もっと可愛い。なんたってルカの弟だからなっ」
「確かに」
赤築の言葉に悔しそうにこちらを睨んでいた少年が、ふいに「今何時?」と聞いてきた。
「はあ?急に何だよ?…ちょっと待てよ。え…っと、八時前だ」
ブツブツと文句を言いながらも、赤築が腕に嵌めた時計を確認して、律儀に答える。
少年が「そろそろかな…」と言いながら、こちらに背を向けて、門の外に向かい出した。
咄嗟に俺は、少年の腕を掴む。
「おい、待て。まだルカ様の居場所を聞いていない」
「え~、もういいんじゃない?きっとその人狼だって、黒条にいる方が居心地がいいって。それに聞いたよ?すっごく綺麗な男の人なんだって?もしかしたらトウヤ様のお気に入りになってるかもね。そしたらもう、戻って来ないよ」
「は?誰だ、そいつは?」
俺は、自分でも驚く程の低く冷たい声を出した。
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