たゆたう青炎

明樹

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孤独な青の秘密

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僕を真っ直ぐに見つめてくるトウヤさんに、首を傾げる。


「なぜ?青蓮家では、変身出来ない僕は疎まれていたのに…」
「だから無知とは恐ろしいと言うのだ。おまえ程、特別な存在はいないというのに」


トウヤさんの言葉に、僕はハッと目を見開く。


『ルカ様だけが変身出来ないというのも、神様に選ばれた特別な存在に思えてなりません』


ーーロウも、いつも同じことを言ってた。ロウ…、ロウに会いたい…。


俯いた僕の頭の向こう側から、トウヤさんが話し続ける。


「五百年前の黒条家にも、ルカのように変身出来ない人狼がいたんだ。彼がいたから、黒条家は人狼界のトップでいられた」
「えっ!」


僕は勢いよく顔を上げた。少し身を乗り出してしまい、テーブルに足が当たって、カップがカチャンと音を立てる。


「変身出来ない人狼がいたのっ?じ、人狼界で唯一、僕だけしかいないのかと思ってた…っ」
「違う。前例がある。おまえの家を悪く言うようだが、俺からすれば、おまえを疎ましく思った青蓮家は、愚かだとしか言いようが無い。いいか、ルカ。おまえが変身出来ないのは、出来損ないだからでは無い。変身しなくとも良いからだ」
「どっ、どういうことっ?」


トウヤさんは、何を言おうとしてるのだろうか。
僕は、硬く握り締めた掌に汗を滲ませて、続きを待つ。


「変身出来ない人狼は、全ての人狼を操る能力がある。だから、変身して戦う必要が無いのだ。人狼に命令して自分の身を守ればいいのだからな」
「え…?」


 ーーなに…?人狼を、操る…?うそ…だ。そんなこと、出来るわけ…。


膝の上に置いた拳が、小さく震えている。
今初めて知らされた、衝撃の事実。でも…。


「でも…五百年前の彼がそうだったとして、僕に…その能力があるとは限らない。僕は、本当にただの出来損ないかもしれない。だって現に今、僕にそんな力は無い」
「いや、間違いなくルカにはその能力がある。まだ開眼していないだけだ。何かの切っ掛けがあれば、能力が目覚める筈だ。まあ急ぐ必要はない。ルカには、その能力が目覚めたら、黒条家を四大名家と並ぶ位置に戻るよう、協力して欲しい。それが、ルカの大事な青蓮の人狼を助けた条件だ」
「わかっ、た…」


小さく頷いた僕に満足気に微笑んで、「今日は一日ゆっくりとしてくれ」と言って、トウヤさんとダンは部屋を出て行った。
僕は、ソファーにズルズルと寝転んで、天井を見つめて考えた。


ーー能力って、いつ、どうやって目覚めるの?早くロウに会いたいのに…。しかも、もしその能力が無かったとしたら、僕はどうなるの?


僕は、硬く目を瞑り、長く大きな溜め息を吐いた。そして、愛しいロウの名前を何度も呟いた。
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