たゆたう青炎

明樹

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リツが、僕の腕を持ち上げて傷口に唇を寄せる。チュッチュと吸った後に、舌を這わせて舐めていく。
腕に感じる生暖かい感触にブルリと身体を震わせて、揺れるリツの赤味がかった栗毛に、そっと手を差し入れた。


腕の痛痒い疼きが治まり、リツがゆっくりと顔を上げる。リツの口の端に僕の血がついている。僕は、手を伸ばして指でリツの口端を拭った。
リツがその手を掴んで、僕に顔を寄せる。
唇が触れそうになった瞬間、僕の脳裏にロウの顔がよぎって、思わず顔を背けてしまった。


リツは、僕のこめかみにキスをして、「ごめん…、また許可なくするとこだった」と寂しく笑う。


「傷…治してくれて、ありがとう…」


僕は俯いたまま、小さく呟いた。





午後の授業中で、人気のない校舎を静かに移動して、リツと裏門から学校を出た。
駅に向かって歩きながら、リツがリツのお姉さんに、僕とリツの鞄を保健室で預かってくれるようにメールを入れる。
僕とリツは、駅で別れて一旦家に帰ることにした。
着替えて荷物を用意してから、リツが迎えに来ると言う。
「必ず行くから」とリツが僕の手を握って言うと、自分が乗るホームへと降りて行った。


家に着いた頃には汗だくで、リビングのエアコンのスイッチを入れると、部屋から着替えを持って来て、お風呂場へ向かう。
シャワーで汗を流してから、ちょうどよく冷えたリビングで、身体の熱を冷ました。
そして、部屋で少しの服をリュックに詰めて、机の引き出しに入れてあったお金を財布に入れる。
すぐに用意が終わってリビングに戻り、ソファーに寝転んで両手で顔を覆って考える。


ーーロウは、青蓮家に戻った方がいい…。その方が、聡明なロウの能力が充分に発揮できる。それにルキは賢くて…僕と違って素直だ。きっとロウは、自分が仕えるに値する素晴らしい主だと満足するに違いない…。その時に、僕が足枷になってはならない。ロウを煩わせない為にも、僕はここから消えなくては…。


強く瞼を押さえ過ぎたせいで、チカチカとする目を瞬かせながら身体を起こして、ロウの部屋に向かう。
ロウの部屋に入ると、当たり前だけどロウの匂いがして、胸がキュウと締めつけられた。
部屋を見回して、机の上で目を止める。僕は、机に近づき、窓からの陽射しに反射して、キラリと光るそれを手に取った。


ーーロウが、時々嵌めていた指輪…。


僕の指に嵌めてみるけど、どの指でもスカスカで大きい。でも……。


ーー何か、ロウの物を持っていたい。ねぇ…この指輪、もらっていい?


ここにはいないロウに問いかけて、指輪をズボンのポケットにしまい込んだ。
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