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14. 目覚め ~おお、神よ……感謝します!~
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仕事はすべてあとまわしにし、王子さまはカラスを連れて、お姫さまの部屋へ向かいました。
ベッドの上では、お姫さまがしずかに眠っています。
カラスは王子さまの肩の上で、なんてきれいな人だろうと思いました。王子さまと同じ金色の髪をしたお姫さまの瞳は、長いまつげの下にかくれて見えません。
お姫さまのバラのようなくちびるに、王子さまはそっと銀色のスプーンをふれさせました。スプーンの上には、七色のしずくが乗っています。あの湖の水です。
七色のしずくが、するりとお姫さまのくちびるに入りました。
窓から吹きこむ風が、白いレースのカーテンを何度ゆらしたころでしょうか。
「ん……」
と、小さな吐息がお姫さまのくちびるからこぼれました。
「姫っ……!?」
王子さまがお姫さまの手をとり、必死によびかけます。
カラスも、王子さまの肩の上から、いっしょになってよびかけました。
すると、お姫さまの長いまつげがふるえ、そろそろとまぶたが持ちあがりました。
青色の瞳が、まだ夢見るように王子さまとカラスを見つめ返します。
「王……子……?」
天使の歌声を思わせる声が、王子さまをよびました。
「ああ、わたしだ! おお、神よ……感謝します!」
王子さまはなみだをうかべながら、お姫さまの手に口づけました。
ベッドの上では、お姫さまがしずかに眠っています。
カラスは王子さまの肩の上で、なんてきれいな人だろうと思いました。王子さまと同じ金色の髪をしたお姫さまの瞳は、長いまつげの下にかくれて見えません。
お姫さまのバラのようなくちびるに、王子さまはそっと銀色のスプーンをふれさせました。スプーンの上には、七色のしずくが乗っています。あの湖の水です。
七色のしずくが、するりとお姫さまのくちびるに入りました。
窓から吹きこむ風が、白いレースのカーテンを何度ゆらしたころでしょうか。
「ん……」
と、小さな吐息がお姫さまのくちびるからこぼれました。
「姫っ……!?」
王子さまがお姫さまの手をとり、必死によびかけます。
カラスも、王子さまの肩の上から、いっしょになってよびかけました。
すると、お姫さまの長いまつげがふるえ、そろそろとまぶたが持ちあがりました。
青色の瞳が、まだ夢見るように王子さまとカラスを見つめ返します。
「王……子……?」
天使の歌声を思わせる声が、王子さまをよびました。
「ああ、わたしだ! おお、神よ……感謝します!」
王子さまはなみだをうかべながら、お姫さまの手に口づけました。
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