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42. え……せめて開けてみようよ。

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 リビングに入るなり、トワは柚姫の持っている袋に難色を示した。

「捨てろ」
「え……せめて開けてみようよ。なんか、けっこう重いよこれ……?」

 柚姫は袋の中から、がさがさと中身を取り出し、ソファーの上に置いた。

 質素な包装紙に包まれた柔らかい大きなものと、薔薇模様の包装紙に包まれた小さな箱らしきもの。

「何だろう……?」

 てっきりまた、お菓子類かと思ったんだけど……。

 とりあえず、大きい方から開けてみる。

「これはー……」

 中から出てきたのは、四角くて、平べったくて、抹茶色でちょっと庶民的なデザインの……

「座布団?」

 それは何処からどう見ても、座布団だ。

 って、何で座布団? と思ってから柚姫は、はたと屋上でのトワとチトセのやり取りを思い出す。

 ――座布団、さしあげましょうか?

 涼しい声で、チトセは確かにそう言っていた。

 いや、しかし、まさかあれが本気だったとは……。

 いや、それよりも、だ。

 柚姫は、ちらりとトワを見る。

 ……ほら、やっぱり怒ってる。

 トワは眉間にしわを寄せ、座布団を睨んでいる。

 そして一言。

「何で一つなんだ、柚姫の分がない」

 突っ込みどこはそこ!? 

 しかも、ちゃっかり自分のものにしているし……。

 でも何となく、それはトワ宛てで間違いない気もした。包装が雑だったから、という理由はトワには内緒だ。

 トワはぶつぶつと呟く。

「……それとも、一つだけ贈ることで、この家から柚姫に出て行けと言う遠回しな嫌がらせか?」

 ……何故そうなる。ここは私の家だ。

 顔を引きつらせながら、柚姫はもう一つの贈り物に手を伸ばした。

 こちらは、座布団と違ってやけに可愛らしい包装がしてある。指輪とかネックレスが入っていてもおかしくない装丁だ。
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