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ヒメゴトの後の、種明かし

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 顔を真っ赤に染めるファルナは、恥ずかしくて今度はグリジットの腕から逃げようとする。

 しかし太い腕からは、そう簡単には逃げられない。

「可愛い」
「……っ!!」

 更に自分を抱きしめる力を強めて、グリジットはそんなことを囁く。しかも耳を優しく食みながら。

「……あ、ん」

 落ち着いたはずの身体が再び熱を持つ。

 密着しているグリジットは、すぐに気付いたのだろう。彼自身も吐息を熱いものに変えて、今度はうなじに唇を寄せる。

「ん……あ」

 触れるか、触れないか。

 そんなギリギリの優しさで、グリジットの唇は首筋に移動し、最後はファルナに口付けを落とす。
  
 そうして、このまま深く口付けを交わすと思いきやーー

「ファルナ、聞いて欲しいことがある」
「……あ……ふぇ?」

 急に声音が変わったグリジットに、ファルナは嫌な予感がした。

「……はい」

 甘く熱くなるであろう流れに逆らって、グリジットは生真面目な表情になったのだ。

 きっと覚悟を持って聞かなければならないことなのだろう。

 ファルナは胸元からずり落ちそうになっていた毛布をぐいっと持ち上げて、聞く姿勢を取った。

 対してグリジットは、自分から切り出したのにも関わらず口を一文字に結んでじっと一点を見つめている。

 頭の中で言葉を組み立てているのだろうか。それとも伝えるべき言葉は決まっているが、とても言いにくいことなのだろうか。

 そんな不安な気持ちが顔に出ていたのだろうか、グリジットはきゅっとファルナの手を握って口を開いた。

「一番伝えたいことは、多分……いや、きっと驚くと思うから先に君に関わることを伝えたいと思う。ただそれでも驚くと思うし、疑問を持つと思うができれば最後まで何も言わずに聞いて欲しい。いいか?」

 もうすでに疑問がいくつか浮かんだ。でもファルナはそれを飲み込んで頷く。

「はい」
「大丈夫、怖い話じゃないからそこまで緊張しなくて良いよ」

 強張ったファルナの顔をほぐすように、グリジットは手の甲で優しく撫でてから語りだした。

「単刀直入に言うと、悪質な詐欺に引っ掛かってしまった君の屋敷と財産を取り戻した。といっても、財産に関しては全部とはいかなかったけれど、それでも君が生きていくには問題ない程度には取り戻した」
「……っ!!」

 ファルナは面接の際に、グリジットにエセ親族に屋敷を乗っ取られて押し出されたことは伝えていない。ただ孤児になったと端的に説明しただけ。

 だけれどグリジットは、詳細を知っていた。
 しかも自分のあずかり知らぬところで、たくさん動いてくれていた。でも、それは一介の医者が到底できることでは無い。

 淡々と語られたそれらはあまりに衝撃的でーーファルナは、もうどこから驚いて良いのかわからなかった。
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