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ヒメゴトの後の、種明かし

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 揺蕩う意識の中、大きな手が自分の頭を優しく撫でてくれる。

 ファルナは、半分夢の中でふにゃふにゃと笑う。

 すぐさまふっと吐息混じりの笑い声が聞こえ、ファルナはパチリと目を開けた。

「……あ」

 夜明け前の薄明りの中、グリジットがベッドに横たわるファルナを覗き込んでいた。彼自身も横になった状態で。

「すまない。起こしてしまったよだね」

 申し訳なさそうに眉を八の字にするグリッドに、ファルナは首を横に振る。

 それから頭にあるグリッドの手をきゅっと握っって口を開く。

「……せんせ、ずっとおきてたんですか?」
「ああ」
「えっと……ねむくないんですか?」
「ああ」
「ごめんなさい」

 話しかければかけるほどグリジットが不機嫌な顔をするものだから、ファルナは最終的に彼が怒っていると結論付けた。けれども、

「は?……寝ぼけてるのか??」
「は?」

 首を傾げるグリジットに、ファルナは間抜けな声を出してしまう。

 ただ、この様子から見るに彼は怒っているわけではないようだ。でも機嫌が良いとは言えない表情をしている。

 ファルナはグリジットに媚薬を盛った。脅すような真似だってした。

 結果として自分の望む結果になったとはいえ、情事の熱が冷めれば彼だって思うところがあったのだろう。

 そんなことをファルナはたどたどしくグリジットに言った。

 そうすれば心底呆れた溜息を落とされた。

「くだらないことを考えるな。それと怒っているように見えたのは、君が私のことを”先生”と呼んだからだ」
「あ」
「”あ”じゃない。”あ”じゃ。ファルナ、言い直してもらおうか」
「……グリジット」
「そうだ。今後は間違えないでくれ」
「……ぅ……はい。……ご、ごめんなさい」

 出来の悪い生徒を見る視線に耐え切れず、ファルナは毛布の中に逃げ込む。

 けれど、毛布をめくられ力任せに引き上げられてしまった。しかも引っ張られた勢いが強すぎて、ファルナの胸が露わになる。

「……っ!!」

 慌てて毛布を引っ張って胸を隠せば、今度は楽し気なグリジットの笑い声が降ってくる。

「隠すな。今更じゃないか」
「で、でもっ」

 確かに今更だ。ちょっと前に抱かれた時、部屋の明かりは全部落としてはいなかったから、がっつり見られただろう。

 でもそれはそれ。それにグリジットは服を着ている。自分だけ裸でいる現状は、思っている以上に恥ずかしい。

 なのにグリジットは、大事な大事な毛布を剥ぎ取ろうとする。

「隠すと余計に見たくなるもんだ」
「……ぅ……うう」
「だが、やめておこう。私とてこんなことで君に嫌われたくないからな」

 口調とは裏腹に未練たっぷりの手つきで毛布を整えたグリジットは、ファルナの顎を優しく掴んで目を合わせた。

「初めてで無理をさせてしまったが……体調はどうだ?媚薬を飲んでいたとて、かなり辛かっただろう」

 労りと後悔をい交ぜにしたグリジットに、ファルナは強い罪悪感を覚えた。

 そしてずっと秘密にしておこうと思っていたそれをつい口にしてしまった。

「グリジット、ごめんなさい。私、媚薬は飲んでません」

 ーーあの瓶の中身は、ただの水でした。

 白状したファルナを見つめるグリジットは、ものの見事に呆然としていた。
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