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【夜の治験 卒業編】 メイドは一晩限りの過ちを望む
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グリジットは今すぐファルナの服を剝いでしまいたい衝動を抑えて、ベッドへと誘う。
大人しく仰向けに横たわるファルナに覆い被されば、彼女の身体から甘い香りがする。
「ファルナ、私は今から君を抱く。でもその前に、言っておかなければならないことがあるんだ」
不安げにファルナが息をのむ。
でもすぐに薄っすらと笑みを湛えて、グリジットの手を握った。
「どんなことでも構いません。なんでも仰ってください」
媚薬を飲んで身体が疼いて苦しいはず。なのに、自分を気遣うファルナにグリジットは愛おしくてたまらない。
「私は一夜限りで終わらすつもりはない」
ファルナは一夜限りの過ちで構わないと言ってグリジットを求めた。
でもグリジットは一線を越えるなら、もうファルナを手放すことなんてできそうになかった。この先、彼女がどんなに別の男を求めようとも、どれだけ嫌がられようとも。
だからファルナに覚悟を持ってほしかった。
「私に抱かれたら、君はもう逃げられない。それでも私に抱かれるかい?」
最後はみっとも無く声が震えてしまった。言葉にして、ファルナが拒まれるのをこんなにも怖がっていることに気付いて、グリジットはひっそりと己を笑う。
「せんせ……わたし、嬉しい。とっても」
ふわりと首に柔らかい腕が巻き付いたと同時に、望む以上の言葉を貰えてグリジットは不意に泣きそうになった。
鼻先に触れてしまいそうなほど近いファルナの顔が堪らなく可愛らしくて、気付けばグリジットはその小さな唇に自分の唇を押し当てていた。
「ん……あ……」
ベッドに押し倒しながら、何度も角度を変えて口づけを落とせば、甘い声が耳朶をくすぐる。
これまで何度も一線を越えるか超えないかという夜を過ごしてきたけれど、こうやって唇を触れ合わせるのは初めてだったことにグリジットは気付いた。
そうして改めて、もう主とメイドでもなく、まして医者と治験者でもなことを実感する。
「ファルナ、私の名前を言ってごらん」
「え……んぁ……グリジットさま?……ん」
「違う。グリジットだ」
「あ……ん……グリジット?」
「そうだ。これからは私のことをそう呼ぶように」
「え……あ……んっ……良いんですか?」
口付けを落とす合間に交わす言葉だけで、甘く激しい疼きをもたらす。
「当たり前だ」
ーーもう、私たちは恋人なのだから。
これ以上ないほど優しく紡いだグリジットに、ファルナはへにゃっと笑う。
「……グリジット」
「ああ」
「グリジット」
「ああ」
「グリ……ん、あん……ん」
3度目に名を呼ばれた時には、グリジットは耐え切れずにファルナの口に己の舌を差し入れていた。
大人しく仰向けに横たわるファルナに覆い被されば、彼女の身体から甘い香りがする。
「ファルナ、私は今から君を抱く。でもその前に、言っておかなければならないことがあるんだ」
不安げにファルナが息をのむ。
でもすぐに薄っすらと笑みを湛えて、グリジットの手を握った。
「どんなことでも構いません。なんでも仰ってください」
媚薬を飲んで身体が疼いて苦しいはず。なのに、自分を気遣うファルナにグリジットは愛おしくてたまらない。
「私は一夜限りで終わらすつもりはない」
ファルナは一夜限りの過ちで構わないと言ってグリジットを求めた。
でもグリジットは一線を越えるなら、もうファルナを手放すことなんてできそうになかった。この先、彼女がどんなに別の男を求めようとも、どれだけ嫌がられようとも。
だからファルナに覚悟を持ってほしかった。
「私に抱かれたら、君はもう逃げられない。それでも私に抱かれるかい?」
最後はみっとも無く声が震えてしまった。言葉にして、ファルナが拒まれるのをこんなにも怖がっていることに気付いて、グリジットはひっそりと己を笑う。
「せんせ……わたし、嬉しい。とっても」
ふわりと首に柔らかい腕が巻き付いたと同時に、望む以上の言葉を貰えてグリジットは不意に泣きそうになった。
鼻先に触れてしまいそうなほど近いファルナの顔が堪らなく可愛らしくて、気付けばグリジットはその小さな唇に自分の唇を押し当てていた。
「ん……あ……」
ベッドに押し倒しながら、何度も角度を変えて口づけを落とせば、甘い声が耳朶をくすぐる。
これまで何度も一線を越えるか超えないかという夜を過ごしてきたけれど、こうやって唇を触れ合わせるのは初めてだったことにグリジットは気付いた。
そうして改めて、もう主とメイドでもなく、まして医者と治験者でもなことを実感する。
「ファルナ、私の名前を言ってごらん」
「え……んぁ……グリジットさま?……ん」
「違う。グリジットだ」
「あ……ん……グリジット?」
「そうだ。これからは私のことをそう呼ぶように」
「え……あ……んっ……良いんですか?」
口付けを落とす合間に交わす言葉だけで、甘く激しい疼きをもたらす。
「当たり前だ」
ーーもう、私たちは恋人なのだから。
これ以上ないほど優しく紡いだグリジットに、ファルナはへにゃっと笑う。
「……グリジット」
「ああ」
「グリジット」
「ああ」
「グリ……ん、あん……ん」
3度目に名を呼ばれた時には、グリジットは耐え切れずにファルナの口に己の舌を差し入れていた。
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