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最終面接という名の淫らなヒメゴト
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ファルナが屋敷を追い出されて掲示板の前に立ったのは、昼過ぎ。そして現在夕刻となろうとしているが、まだそこにいる。
ただしその間、求人広告は一切追加されていない。
「......ないかぁ。やっぱ、ないかぁ。うん、ないね」
そんなことを呟くファルナであったが、諦め悪くまだ視線は掲示板を見続けている。
しかし時刻はもう夕刻。太陽は西に沈んで、肉眼で文字を追うのは難しい。
だからファルナは後ろ髪を引かれつつ、その場を後にした。
─── 翌日。
何とか夜をしのいだファルナは、再び掲示板の前に立っていた。
しかし、求人広告は追加されていない。それどころか、減っている。
「......どうしよう。このまま新しいお仕事が張り出されるのを待つか、それとも自力で働けそうなお店を探すか。悩むな」
共同井戸でお水をたらふく飲んだだけの状態で街を歩くのは、リスクが高い。さりとて、昨日より減っている求人広告が「待っても無駄だよ」と暗に訴えている。
(さあて、どうしたもんか)
亡き父は商才はあったけれど、娘には商売のイロハを教えることはなかった。そして母親もファルナに事業家として成功するよりも、よき妻になることを望んでいた。
だから残念ながらファルナは商家の娘として生まれたけれど、叩き込まれたのは、花嫁修行という名の裁縫、家計の管理、それからダンスを少しと、殿方が喜びそうな簡単な料理。つまり、求人をかける側の気持ちはわからない。
しかしここで何もせず待っていることは辛い。早朝の街道は木枯らしがビュンビュン吹いて立っているだけで、凍えそうな寒さだ。
そんなわけでファルナは身を暖めるために、近場のお店が求人広告を張り出していないか見て回ること決めた。......だが、3歩で足を止めた。
気が変わったわけでも、心が折れたわけでも、誰かに呼び止められたわけでもない。
等間隔に並んだ街灯の一つに、求人広告が張られていたからだ。
==================
・診療所内での住み込みメイド急募。
・十代後半から、二十代前半の健康な女性。
・未経験可。各種手当てあり。
※詳細は面接にて。当日面接歓迎。
==================
簡素な求人内容であるが、ドンピシャでファルナが求めていた仕事内容だった。
迷う必要はなかった。
ファルナはベリッと街灯から求人広告を剥がすと、記載されている住所へと向かった。所持金ゼロの為、辻馬車を拾うことはできないから徒歩で。
それから数時間後、足が棒になるほど歩いて、歩いて、歩き疲れたファルナであったが、無事面接場所に到着した。
ただその結果、ボサボサの髪に、寝不足の顔。健康とは言いがたい容姿になってしまったが、何とか面接までこぎつけた。
後は、精一杯愛想を良くして採用してもらうのみ。
......そう思っていたのだが、まさかここで自分でスカートをたくしあげて、雇い主になるであろう男性に処女かどうかを調べられるなんて思いもよらなかった。
ただしその間、求人広告は一切追加されていない。
「......ないかぁ。やっぱ、ないかぁ。うん、ないね」
そんなことを呟くファルナであったが、諦め悪くまだ視線は掲示板を見続けている。
しかし時刻はもう夕刻。太陽は西に沈んで、肉眼で文字を追うのは難しい。
だからファルナは後ろ髪を引かれつつ、その場を後にした。
─── 翌日。
何とか夜をしのいだファルナは、再び掲示板の前に立っていた。
しかし、求人広告は追加されていない。それどころか、減っている。
「......どうしよう。このまま新しいお仕事が張り出されるのを待つか、それとも自力で働けそうなお店を探すか。悩むな」
共同井戸でお水をたらふく飲んだだけの状態で街を歩くのは、リスクが高い。さりとて、昨日より減っている求人広告が「待っても無駄だよ」と暗に訴えている。
(さあて、どうしたもんか)
亡き父は商才はあったけれど、娘には商売のイロハを教えることはなかった。そして母親もファルナに事業家として成功するよりも、よき妻になることを望んでいた。
だから残念ながらファルナは商家の娘として生まれたけれど、叩き込まれたのは、花嫁修行という名の裁縫、家計の管理、それからダンスを少しと、殿方が喜びそうな簡単な料理。つまり、求人をかける側の気持ちはわからない。
しかしここで何もせず待っていることは辛い。早朝の街道は木枯らしがビュンビュン吹いて立っているだけで、凍えそうな寒さだ。
そんなわけでファルナは身を暖めるために、近場のお店が求人広告を張り出していないか見て回ること決めた。......だが、3歩で足を止めた。
気が変わったわけでも、心が折れたわけでも、誰かに呼び止められたわけでもない。
等間隔に並んだ街灯の一つに、求人広告が張られていたからだ。
==================
・診療所内での住み込みメイド急募。
・十代後半から、二十代前半の健康な女性。
・未経験可。各種手当てあり。
※詳細は面接にて。当日面接歓迎。
==================
簡素な求人内容であるが、ドンピシャでファルナが求めていた仕事内容だった。
迷う必要はなかった。
ファルナはベリッと街灯から求人広告を剥がすと、記載されている住所へと向かった。所持金ゼロの為、辻馬車を拾うことはできないから徒歩で。
それから数時間後、足が棒になるほど歩いて、歩いて、歩き疲れたファルナであったが、無事面接場所に到着した。
ただその結果、ボサボサの髪に、寝不足の顔。健康とは言いがたい容姿になってしまったが、何とか面接までこぎつけた。
後は、精一杯愛想を良くして採用してもらうのみ。
......そう思っていたのだが、まさかここで自分でスカートをたくしあげて、雇い主になるであろう男性に処女かどうかを調べられるなんて思いもよらなかった。
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