46 / 95
第四章
その温度差で、お二人の関係がわかりました③
しおりを挟む
駆け寄ってくる東野和真から逃げるように、美亜は課長の背後に隠れた。
「……課長、まさか今日のお仕事って、あの人も同席するんですか?」
類は友を呼ぶ。イケメンは、イケメンを呼ぶ。
そんな法則を信じているわけではないが、深夜の病院で出迎える医者の目的は一つしか思い当たらない。
「課長?あの……」
何も言わない課長に、美亜は身体を捻って見上げる。
面会時間が終わったせいで間引きされた蛍光灯に照らされた課長の顔は、苦い顔をしているがやはりイケメンだ。
こちらに到着した白衣姿の東野も、同じくイケメンではある。でも医者のコスプレをしているホストにしか見えない。恐るべきチャラ男力。
そして東野は、医者の象徴である白衣を霞ませるような発言をした。
「美亜ちゃん、この前のワンピースも可愛かったけど、今日もシックで奇麗だねー。俺の為にお洒落してきてくれて、マジ感動」
やっぱりこの人とは関わり合いたく無いことを再確認した美亜は、課長の背に隠れたまま動かない。
「お前、こいつと知り合いなのか?」
「まさか。課長ったら違いますよー」
即答する美亜に、課長は疑惑の目を向ける。
「本当に他人ですから!あんな人、私、知りません」
「向こうはそう思ってないようだが?」
「それこそ知りませんよっ」
ムキになって言い返せば、課長は何か言いたげな顔をしたがすぐに前を向く。
美亜も恐る恐る顔を覗かせれば、東野は傷付いた様子は無く、今度は課長の肩をポンっと叩いた。
「よっ!指宿ー。こんな可愛い子連れてムカつくな。マジムカつくな。で、元気してたか?今日は悪ぃな。あとお前が連れてくるって言ってた稀眼の人ってまさか美亜ちゃん?」
息継ぎせず一気に言い終えた東野に、課長は「ああ」と一言だけ言った。その声は、不機嫌以外何ものでもない。
「久しぶりだってのに、そんな怖い顔すんなよー。俺とお前の仲だろー?」
「はっ……オレとお前の仲?冗談じゃない」
「ボッチのお前と仲良くできるのは、俺だけなのに冷たいねー」
兄貴然する東野を、課長は汚いものを見る目で見ている。
「俺はお前とだけは、一生他人でいたい」
「そうもいかないのが縁ってものさ。っていうか、お前のそのしかめっ面見てると、俺、だんだん気持ち良くなりそう。そういう扉が完全に開いたら、責任取ってくれよな?ダーリン」
「くたばれ」
すかさず物騒なことを言った課長に、東野は寂しそうに「ノリが悪いなぁーもー」としゅんと肩をすくめた。
そのやり取りを傍観していた美亜は、ほっと胸をなでおろす。この二人の温度差で、課長は少なくとも自分と同じ感性を持っていることがわかったから。
「……課長、まさか今日のお仕事って、あの人も同席するんですか?」
類は友を呼ぶ。イケメンは、イケメンを呼ぶ。
そんな法則を信じているわけではないが、深夜の病院で出迎える医者の目的は一つしか思い当たらない。
「課長?あの……」
何も言わない課長に、美亜は身体を捻って見上げる。
面会時間が終わったせいで間引きされた蛍光灯に照らされた課長の顔は、苦い顔をしているがやはりイケメンだ。
こちらに到着した白衣姿の東野も、同じくイケメンではある。でも医者のコスプレをしているホストにしか見えない。恐るべきチャラ男力。
そして東野は、医者の象徴である白衣を霞ませるような発言をした。
「美亜ちゃん、この前のワンピースも可愛かったけど、今日もシックで奇麗だねー。俺の為にお洒落してきてくれて、マジ感動」
やっぱりこの人とは関わり合いたく無いことを再確認した美亜は、課長の背に隠れたまま動かない。
「お前、こいつと知り合いなのか?」
「まさか。課長ったら違いますよー」
即答する美亜に、課長は疑惑の目を向ける。
「本当に他人ですから!あんな人、私、知りません」
「向こうはそう思ってないようだが?」
「それこそ知りませんよっ」
ムキになって言い返せば、課長は何か言いたげな顔をしたがすぐに前を向く。
美亜も恐る恐る顔を覗かせれば、東野は傷付いた様子は無く、今度は課長の肩をポンっと叩いた。
「よっ!指宿ー。こんな可愛い子連れてムカつくな。マジムカつくな。で、元気してたか?今日は悪ぃな。あとお前が連れてくるって言ってた稀眼の人ってまさか美亜ちゃん?」
息継ぎせず一気に言い終えた東野に、課長は「ああ」と一言だけ言った。その声は、不機嫌以外何ものでもない。
「久しぶりだってのに、そんな怖い顔すんなよー。俺とお前の仲だろー?」
「はっ……オレとお前の仲?冗談じゃない」
「ボッチのお前と仲良くできるのは、俺だけなのに冷たいねー」
兄貴然する東野を、課長は汚いものを見る目で見ている。
「俺はお前とだけは、一生他人でいたい」
「そうもいかないのが縁ってものさ。っていうか、お前のそのしかめっ面見てると、俺、だんだん気持ち良くなりそう。そういう扉が完全に開いたら、責任取ってくれよな?ダーリン」
「くたばれ」
すかさず物騒なことを言った課長に、東野は寂しそうに「ノリが悪いなぁーもー」としゅんと肩をすくめた。
そのやり取りを傍観していた美亜は、ほっと胸をなでおろす。この二人の温度差で、課長は少なくとも自分と同じ感性を持っていることがわかったから。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる