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第二章

いやぁーそのキャラ設定は無理があるでしょ①

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「ん、私は元気だぃね。おにいも元気そうで安心したんさぁ。彼女さんとは仲良くとしてるかぃ?喧嘩とかしてねぇ?……あーね、そんなんおにいが謝ればいんさぁ。年末の帰省なん?まだわがんねー……あーね、うんうん。それじゃーあ、また」

 兄俊郎からの定期連絡を早々に終わらせた美亜は、鍋を覗き込む。くつくつ煮えたお揚げは、テラっとしていて湯気と共に甘じょっぱい香りが食欲をそそった。

 


 街灯りを見下ろしながら風葉にしがみついてワンワン泣いた後、美亜はそのまま彼の腕の中で眠ってしまった。

 そうして目が覚めたら朝だった。前回同様、課長の寝室で、かつ課長のベッドで。

 真っ先に衣類に乱れが無いか確認した美亜の耳に、「随分と舐めた真似をしてくれるな」と呆れ切った声が届いた。声のする方に視線を向ければ、寝室の入り口扉に背を預けて腕を組む課長と目が合った。

 声音とは裏腹に疲れた顔の彼の目の下には、立派な隈があった。

 そこで、美亜は一睡もしないで自分を案じてくれていたことを知った。即座に土下座した。

 しかし課長の機嫌はなかなか直らなかった。

 延々と続く小言に途方に暮れる美亜であったが、それを救ってくれたのは自分の腹の虫。「キュルル~キュル」と可愛く鳴いてくれたおかげで、説教はそこで終わった。

 その後「何か食べに行くか?」と、優しくも提案してくれた課長に、美亜はここで料理をしたいと主張した。すごく図々しいお願いだとは重々承知している。お前馬鹿なん?というツッコミも甘んじて受けよう。

 だがしかし、兼業農家の家庭で育った美亜の趣味は家事。そんな美亜にとって、セレブ仕様のキッチンで料理をするのは憧れ中の憧れである。

 ……という手前勝手な理由と共に、キラキラした目で訴えられた課長は、渋い顔をしながらも了承してくれた。

 余談だが材料費は全部課長持ち。しなやかな身体つきに似合わず太っ腹である。



 などという経緯を得て、美亜は菜箸でお揚げの一つをつまんで状態を確認する。

「……うん。あと少しだな」
 
 呟きながら、今度は隣の鍋を覗き込む。こっちは味噌汁だ。

 しかし鍋の中身はクルミのような柔らかい色ではなく、濃い赤茶色。その名の通り、本日使用した味噌は、ご当地味噌である【赤だし】を使用している。

 初めて赤だしの味噌汁を飲んだ時、美亜の感想は「苦い!しょっぱい!なんだコレ!?」だった。

 しかし苦みの奥にある旨味に気付いた途端、恋に落ちるかのように赤だしの虜になっていた。

 といっても赤だしが本日のメインディッシュではない。

 調理台に並べられているのは、酢飯に錦糸卵にイクラにそぼろに、刻んだ茎わさび。他にもゴマや桜でんぶに細く切ったガリ。

 そう。本日のスペシャルランチは天狐も大好き稲荷ずしだったりする。
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