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第二章

神の御力②

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 美亜は本から顔を上げると、カフェラテを一気飲みする。

 スッキリとした苦みと、ミルクのほのかな甘みが美味しい。程よく温くなっていたので、猫舌の美亜でも難なく飲み込めたそれは喉を優しく通り過ぎる。

 美味しい。さすが有名コーヒーチェーン店。実家では車を走らせること40分の距離にあったのに、ここでは至る所で看板を見る。さすが都会だ。

 今更ながら憧れの都会に住んでいることを実感した美亜は、にんまり笑うどころか再びはぁーっと深いため息を吐いた。

 キラキラ女子に憧れる気持ちは陰るどころか日に日に強くなるけれど、ちっともそれに近づけない。

 都会の象徴であるカフェでお茶をしているのに、悲しいかな。手元にあるのはお洒落系の雑誌ではなく神様辞典。

 不意に訪れるもどかしさと虚しさに、美亜の鼻の奥がツンと痛む。

 しかしそんな気分に浸っていられたのは僅かな間だった。何かに気付いた美亜は、げっと呻くとアタフタしながら荷物を纏めて立ち上がった。

 なぜなら、今まさに元カレこと山崎圭司が同じ店に入ろうとしていたのだ。

「……ちょ、なんでよもうっ。……最悪。本当に最悪。給料日のコンビニといい、私のスマホにGPSでも付けてるの?」

 小声でブツブツ文句を言いながら上着を羽織って、鞄をギュッと掴んだ美亜は、空いたカップを持って俯きながら出口へと向かう。しかし、

「お客様ぁー恐れ入りますが、カップをお戻しくださぁーい」

 口調こそ丁寧だが「パクるなよ、おい」というキツイ女子店員の口調にぎょっとした美亜は、顔を赤くしながら店内に戻り返却カウンターにカップを置く。

 と同時に、注文を終えた圭司とバッチリ目が合った。

「げっ……ん?」

 財布を取られまいと指が白くなるほど鞄を掴んだ美亜であるが、圭司は美亜を素通りして空いている席に着く。それからスマホをいじりだした彼は、一度も美亜に視線を向けることはなかった。

 これまで美亜を見付けると、どんなに嫌な顔をしようとも、どんなに急いでいようともお構いなく駆け寄ってきて金の無心をしていたというのに。

 念のため店外に出た美亜は、ガラス越しに圭司を見つめる。また目が合った。しかし彼は、何のリアクションもしない。美亜のことなど知ったこっちゃないといった感じで再びスマホに視線を落とした。

 それつまり、縁が切れた何よりの証拠ということで。

 しばらく人の流れに任せてノロノロ歩いていた美亜だが、その足は不意に止まる。

「……くくり姫様……ありがとうございます」

 天に向かって感謝の意を送ったら、夕焼け色の空にドヤ顔を決めた美少女が見えたような気がした。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 菊理媛神といえば石川県の白山比咩神社が有名ですが、美亜が住んでいる県でも『白山宮』という神社が主祭神として祀られてます٩( ''ω'' )و おみくじも引けます。
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